独研究チーム、世界記録を塗り替える0.01Hzの超狭線幅レーザーを開発

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ファブリ・ペローFabry-Perotシリコン共振器

ドイツ国立理工学研究所(PTB)が、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)とコロラド大学ボルダー校の共同研究組織JILAと共同で、スペクトル線幅が10mHz(0.01Hz)という超狭線幅レーザーの発振に成功した。光原子時計や精密分光分析、重力波天文学などにおける活用が期待されている。研究成果は『Physical Review Letters』において、6月28日に公開されている。

レーザーは、狭帯域にエネルギーを集中させることができる優れた単色光だということはよく知られている。ただし単色光とはいえ、デルタ関数のように無限に狭い線幅をもつわけではない。例えば安定化しただけのヘリウムネオンレーザーであればその線幅は数MHzの拡がりを持っている。

PTBの物理学者Thomas Legero氏は、「レーザーの線幅が小さければ小さいほど、光原子時計における原子の振動数の計測を、より正確に行うことができる」と、超狭線幅レーザーの必要性を説明する。研究チームのレーザー発振器の中核部分は、シリコン単結晶から作られた21cm長のファブリ・ペロー共振器だ。この共振器は、二重コーンによって固定し距離を保たれた一対の高反射能のミラーから構成されている。この共振器から作り出されるレーザー光の線幅を極限まで小さくするには、ミラー間の距離を変動させる影響要因を徹底的に排除する必要がある。

研究チームは、温度や気圧、地震波や音による影響を排除し、影響要因は共振器内の原子の熱運動、すなわち“熱雑音”のみになるような完全な環境を実現した。これによりミラー間の距離変動で最も支配的なのは、厚さ数ミクロンのSiO2/Ta2O5誘電体からなるミラーコーティング層となる。研究チームはこの装置を-150℃にまで冷却することで熱雑音を抑制し、共振器の長さの変化を水素原子直径の1000万分の1に相当するわずか10アトメーターに保つことに成功した。こうしてスペクトル線幅がわずか10mHzにまで狭窄化された、世界でもっともシャープなレーザー光を実現した。

「このレーザー装置を使えば、例えばドイツのブラウンシュヴァイクの光原子時計と、パリとロンドンにある光原子時計との間で、もっと正確な比較ができるようになる」と、Legero氏。今後、ミラーの材質変更や超低温化で熱雑音をさらに抑え、1mHZ以下の線幅も実現できるだろうと、その将来を展望している。

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