パワー半導体パッケージングなどに適した、新型の銅系ナノ接合材料を開発 北海道大学

北海道大学は2024年11月27日、同大学大学院工学研究院の研究グループが、パワー半導体パッケージングなどに適した新型の銅系ナノ接合材料を開発したと発表した。この材料は低温で焼結でき、短時間の加熱でも高い接合強度を発揮する。

近年、パワー半導体デバイスの小型・軽量化、高効率化、低コスト化が求められている。接合技術はそのキー技術の一つで、200℃以上の高温に耐える高耐熱で環境影響のない接合材料の開発が急務となっている。

研究グループは、これまでに積層セラミックスコンデンサ用の銅ナノ粒子を開発し、その酸化防止に成功してきたが、低温での焼結が求められる半導体用途には適していなかった。また、部品製造時の量産性や安全性の観点から、水素を使用しない窒素雰囲気で焼結できることも求められていた。

研究では、従来の手法とは異なり、銅の原料として表面が酸化した金属銅粒子や、亜酸化銅・酸化銅粒子の混合体を液相還元で処理した。これは、銅イオンの塩を原料とした場合に生じる不純物(コンタミネーション)のリスク低減、安価な材料であるという利点がある。また、液中の銅イオン濃度を容易に安定的に保つことができ、粒子の大きさを均一に制御できる。

今回、この技術を活用し、金属銅をコア、微酸化物ナノ粒子をシェルとするコアシェル型の銅ナノ粒子を大量に合成することに成功した。この構造により、粒子の酸化を防ぎ、安定性を向上する。

次に、開発したコアシェル型銅ナノ粒子を高濃度に分散させたペーストを用いて、200℃で1分間の加圧焼結を行った。できあがった接合は、約40MPaのせん断強度を達成。さらに、焼結時間を15分に延ばすと、せん断強度は約100MPaを達成した。

パワー半導体の接合に必要な強度は20~50MPaであるため、開発したコアシェル型銅ナノ粒子ペーストを用いた場合、従来の材料に比べ、短時間で高強度の金属接合ができることを実証した。破断試験後の断面を観察した結果、この高い強度は、粒子間で破断が起こったのではなく、銅焼結体が塑性変形して破断していることから確認された。

さらに、導電材料として、この銅ナノ粒子を高濃度に分散させたペーストを使用した結果、200℃、60分の十分な焼結で、10.7μΩcmの体積抵抗率を示す導電膜が得られた。鉛含有はんだの体積抵抗率が20μΩcm程度であることから、従来の鉛含有はんだに比べても非常に優れた導電性の導電膜を形成している。この技術は、半導体パッケージングや他の導電材料分野で、大きな応用可能性があると期待されている。

今回の研究成果は、パワー半導体や先端半導体デバイスのパッケージングの接合材料として、より効率的で低コスト、かつ環境に配慮した新素材が提供できる可能性が高まっている。

関連情報

新着情報: 接合・導電材料に適した低温焼結用銅ナノ粒子とその高濃度ペーストの開発に成功〜パワー半導体パッケージング技術の向上に大きな期待〜(工学研究院 教授 米澤 徹)

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