横浜国立大学は2020年3月30日、新東工業と共同で、レーザーピーニングによって表面欠陥のある金属材料の疲労強度を大幅に向上させることに成功したと発表した。レーザーピーニングは、短パルスのレーザーを照射したときの局所的な衝撃作用を利用して、材料表面に圧縮残留応力を導入する表面改質技術である。
今回の研究では、アルミニウム合金にレーザーピーニングを施工し、表面から約0.6mmの深さまで圧縮残留応力を導入した。その後に半円スリット(亀裂状の表面欠陥)を導入し疲労試験を実施した。その結果、レーザーピーニングを施工した場合、深さ0.4mmの半円スリットを導入しても疲労強度が低下しないことが明らかになった。導入した圧縮残留応力の効果によって、疲労亀裂の進展が阻止されることで半円スリットが強度上無害化された結果だ。レーザーピーニングによってアルミニウム合金の疲労強度を最大5倍にまで向上させることができるという。
深さ0.1mm程度までしか半円スリットの無害化できなかった従来のショットピーニング(小さな球状投射材を材料表面に投射する表面改質技術)と比較して大幅に無害化の効果が向上し、投射材の回収の必要もなくなる。またレーザーピーニングでは、複雑な形状の部材に対しても、高精度の施工が可能になる。特に疲労亀裂が生じやすい溶接部や切り欠き部に施工することで機械構造部材の信頼性向上につながるという。