- 2020-5-25
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Subramanian Sankaranarayanan, アメリカエネルギー省(DOE), イリノイ大学シカゴ校, ダウンサンプリング技術, ナノスケール材料センター(CNM), ミセル(界面活性剤分子が集合したコロイド分子), 学術, 機械学習
アメリカエネルギー省(DOE) ナノスケール材料センター(CNM)の研究グループは、材料の微細構造を3次元でリアルタイムに定量解析できる機械学習のアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、ほとんどの構造材料の分析に応用できる。
近年、材料科学の研究では、原子や分子レベルでどのような振る舞いをするのか調べることが重要視されており、ナノスケールでの材料のデータ収集や分析に利用できる新しい手法が求められている。
大半の構造材料は多結晶であるため、分析に使用されるサンプルに含まれる結晶粒の数は数百万に上ることも珍しくない。そして、材料の物理的、機械的、光学的、科学的、熱的な特性に影響する重要な微細構造、すなわち結晶粒の大きさ、分布、サンプル内の空隙といった特徴が、望ましい特性を持つ新材料を発見する上で重要になる。
これまで材料の3D微細構造を可視化するためには、病院で行われているコンピューター断層撮影のように、多くの2Dスライスを撮影し、それらを組み合わせて3D画像を作製していた。
「今回開発したアルゴリズムの特徴は、微細構造について全く情報のない材料でも、数秒以内に正確な3D微細構造を示すことです」とイリノイ大学シカゴ校機械・産業工学科の准教授で、CNM理論・モデリンググループのグループリーダーであるSubramanian Sankaranarayanan氏は述べる。このアルゴリズムを利用した3Dツールで解析したデータから、材料の欠陥や亀裂を検出し、異なる応力やひずみの条件における寿命を予測することが可能だ。
研究グループは、当初サンプル中の多数の粒界をすべて検索し、全微細構造について3Dマッピングすることを考えていたが、非常に時間がかかり非効率であった。そこで、教師なしアルゴリズムを使用して境界を処理し、高い精度で効率の良い結果を得ることに成功した。また、ダウンサンプリング技術を組み合わせることで、大規模な3Dサンプルを数秒で処理し、ロバストでノイズに強い精密な微細構造の情報が得られるようになった。ユーザーは、リアルタイムで変化する微細構造を定量的かつ視覚的に追跡することが可能だ。
この機械学習アルゴリズムは、金属や軟質材料など固体だけでなく、ミセル(界面活性剤分子が集合したコロイド分子)の分布の特性評価も解析できる。