「退職」回避!? テレワークをしながら“実体験”をも開発に——KDDI研究所 明堂絵美氏

ICTを活⽤した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方「テレワーク」。国が推進し、総務省、厚⽣労働省、経済産業省、国⼟交通省が主導する期待の仕事スタイルだ。

「顔が見えるテレワークシステム」を開発しているKDDI研究所 スマートホーム・ロボット応用グループ研究主査の明堂絵美さんは、長野県の自宅で子育てをしながら、自らもテレワーク中。人懐っこい笑顔からは、仕事も育児も充実している様子が伝わってきた。(執筆:杉本恭子、撮影:水戸秀一)

遠隔地でもオフィスにいる感覚。「顔が見えるテレワークシステム」

――現在の仕事の内容を紹介してください。

勤務状況の映像や⾳声をリアルタイムで共有できる「顔が見えるテレワークシステム」の研究開発をしています。私が現在担当しているのは、トライアルによってフィードバックされた課題や要求を集約したり、調査や実験をしたりして、アプリケーションの機能を実装することです。

今はトライアルによる課題はある程度出尽くし、対応もある程度できてきたので、もっと広く使っていただく段階に移っていくところです。

――明堂さん自身も、テレワークをしているそうですね。

はい。今2歳の娘の子育て中で、長野県の自宅からテレワークシステムを活用しながら時短勤務をしています。

自宅ですと、家の中も写ってしまうのが気になりますが、背景を指定した画像に置き換えることもできるので、プライバシーも守られます。休憩中や外出中などの状態を表示したり、「論文執筆中です」などとコメントを入力することもできます。オフィス側には、私の代わりとなるモニターが置いてあり、必要なときはいつでも話をすることが可能です。
週1回の会議もテレワークシステムを使って行います。私のような在宅勤務者のほか、出張先からでも会議に参加することができます。

朝ログインするとオフィスの様子が見え、ザワザワと音も聞こえるので、半分はオフィスにいるような感じがします。気持ちも仕事モードに切り替えられますね。


明堂さんの背景は、実際のオフィス写真で置き換えられている。会社側から、同じ場所で働いている感覚を持ってもらえる効果もある。

テレワークがなかったら「退職」!?「半別居」!?

1人のユーザーとしての実体験も開発に生かされている

1人のユーザーとしての実体験も開発に生かされている

――テレワークシステムを使った在宅勤務を始めたきっかけは。

ちょうど私が育児休暇中に夫の長野転勤が決まりました。当時、私はふじみ野市にあるKDDI研究所に在籍していたので、「半別居状態でもなんとかなるかな」というくらいに考えていました。でも、実際子育てをしていると、体力的にも精神的にも、そんなことはとても無理だということがよく分かりました。

夫の転勤に合わせて一緒に長野に引っ越したのですが、育休後にどのように仕事に復帰しようかと上司に相談をしていたときに、テレワークシステムを活用した在宅勤務という方法があることを聞き、2015年の4月から、自らテレワークをしながらシステムの研究開発をすることになりました。

――テレワークシステムがなかったら、どうしていたと思いますか。

どうしていたでしょうね。無理してでも半別居をしていたかもしれませんし、もしかしたら仕事を辞めていたかもしれません。

もともと在宅勤務制度はあるのですが、比較実験のためにテレワークシステムを使わずに仕事をしてみると、チームでの仕事のしやすさは格段に違います。私もオフィスの仲間も、お互いにいつでも映像を見て話し掛けることができるので、遠くにいても疎外感もなく、一緒に働いている感じがします。

母親としても、出勤時間がない分だけ余裕ができるので、あまりイライラすることなく、育児と仕事を両方楽しめている。こういう働き方ができて、感謝しています。

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