社内で噂の「宇宙好きの新人」が宇宙開発エンジニアに成長するまで——富士通 倉田育枝氏

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衛星の産声を受け取る……感動をモチベーションに

休日には登山や温泉など、自然の空気に触れる。最近は富士通乗馬部にも所属。

休日には登山や温泉など、自然の空気に触れる。最近は富士通乗馬部にも所属。

――プレッシャーの多い仕事なのではないかと思いますが、これまで大変だったことは。

入社してからの数年間は厳しかったですね。

求められている仕事のレベルが分からず、休日もずっとプロジェクトのことを考えていた時期もあり、仕事に忙殺されていました。「試されているのかな」とも思いましたし、自分自身も「ここまではできません」と言うのがいやでした。リフレッシュ方法も含めた自分なりの仕事の仕方を確立できて、さらに自分がコントロールできる業務の範囲が広がってからは、仕事を楽しめるようになりました。

体を壊しては意味がありませんが、最初の2~3年は「ここまでやってはダメなんだ」というのが分かるまで、がむしゃらにチャレンジしてみるのもいいのかもしれませんね。

――では、この仕事をしていてよかったと感じたのは。

鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所でロケットによる衛星打上げ運用の現場に立ち会わせていただきました。人工衛星の打ち上げは、軌道上の衛星と通信ができて初めて打ち上げ成功となるのですが、地球を周回した衛星から、数十分後に初めての通信が届いた瞬間は、鳥肌が立ちました。

さらに、運用室で運用者が衛星の状態をチェックするために食い入るように見ている画面は、私たちが作ったもの。こういうところで、衛星の産声を受け取るために使われていると思うと、すごくモチベーションが上がります。もっと良いシステムにしたい、と士気が高まる良い経験でした。

現場を知ること、エンドユーザーを知ることは本当に大事なことだと学びました。これ以降、仕事の仕方や目線が変わったと思います。

小さいころからロケットの打ち上げをテレビで見ては、どうしてこんなに感動するんだろうと思っていましたが、そこに自分が踏み込めている、その一端を担っているという実感があって「ついにここに来ちゃった!」という感じです。これが私なりの宇宙へのアプローチなんだな、がんばって来てよかったなと思いました。

「宇宙インフラ」で、生活が豊かになるように

宇宙の仕事に就いてよかったのは「宇宙好きな仲間と出会い、語り合い、縁が広がっていくこと」

宇宙の仕事に就いてよかったのは「宇宙好きな仲間と出会い、語り合い、縁が広がっていくこと」

――これからどんなことをしたいですか。

宇宙に関わっていきたいのはもちろんですが、より簡単に、使いやすく、ヒューマンエラーが起きないシステムを提供することが私の目標ですね。

宇宙は開発する時代から、インフラとして利用する時代になってきていると思います。私たちの生活を豊かにするために宇宙インフラが活用されるとなると、利用者は宇宙のことを知らない一般生活者の場合もあるはず。ならば、誰でも使えるユーザーインターフェースであるべきだと思いますし、安価でなければならないでしょう。

宇宙を利用するアイデアもたくさん考えたいですし、それをビジネスにし、より私たちの安全・安心な暮らしに役立つ仕組みづくりへとつなげてゆきたい。ただ、宇宙の利用だけでなく、宇宙のゴミ問題など、さまざまな視点から、日本の宇宙開発に寄り添い、支えたいという思いがあります。

――エンジニアを目指す女性にアドバイスを。

エンジニアの世界では、男女問わず論理的思考は最低限必要になりますが、論理で説明し難い「女性のソフトでしなやかな感性」を生かせるところもあるのではないかと思います。人と人をつなぐとか、黙々と仕事をする職人的な人たちの力をもっと引き出すとか……。会話が足りて無さそうな部分を雰囲気で汲み取る……そういう「女のカン」みたいな素質は、白黒付けづらい場面をフォローするのに生かせる部分かもしれないと思うので、もっと女性エンジニアの仲間が増えるといいなと思います。

宇宙開発は女性が挑戦できる分野ですし、私自身も軌道力学の計算式に向かう素養はないと思っていましたが、軌道のことも一から教わり、プログラムを作れるようになりました。むしろ会社に入ってから教わることのほうが大きかったです。

だからこそ、好きなことやモチベーションが上がることに強い思いを持ち、貪欲になるといい。好きなことは自然と学びますし、自分の可能性も広げられるはずです。

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