業界初のドア開閉機構を開発。目標は「高齢者関連なら船渡に聞け」――大建工業 船渡まなみ氏

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建築専攻。でも数学や物理は苦手

住環境の安全性や快適性に興味があり、大学では住宅地での街灯の明るさを研究。

住環境の安全性や快適性に興味があり、大学では住宅地での街灯の明るさを研究。

――学生時代の専門は。

建設工学専攻・都市環境工学研究室に所属していました。昔から決めていたわけではありませんが、建築には子どものころから興味はあったように思います。新聞に挟まってくる不動産の折り込みチラシで、住宅の間取りを見るのがとても好きでした。

中学のときに初めての海外旅行で行ったドイツで、建築に対する興味が深まりました。それまでは日本にあるビルや家屋しか知りませんでしたが、ヨーロッパで石の建築を見て、築何百年という建物が今も使われていることを知りました。「家って、そんなに長く使えるんだな」と思ったことを覚えています。

両親は文系ですが、祖父の兄弟が大工だったそうです。私は残念ながら会えなかったのですが、祖父の家を建てたという話は聞いていました。もしかするとDNAがあるのかもしれませんね。

――なぜ大建工業を選んだのですか。

建築に関わりたいと思っていたので、住生活に身近な製品の製造・販売を行っている当社に興味を持ちました。でも職種については、「どうしても開発を……」と思っていたわけではありません。扱うものが建築なら、何でも興味をもって取り組めるのではないかと思っていました。

実は、私は数学や物理などは苦手で、図工や3D空間の認識も得意ではありません。図面を書いて作ってみたら躯体に入らなかったとか、表裏が逆だったとか……。そういうことは何回もありました。今この仕事をしていることが、自分自身でも不思議なくらいですね。

一番大切なのは安全性。開発にはコミュニケーションも重要

忙し過ぎて体調を崩した経験から、平日終業後は体を休めることを習慣に。「仕事から帰ると30分以内には寝てしまう」

忙し過ぎて体調を崩した経験から、平日終業後は体を休めることを習慣に。「仕事から帰ると30分以内には寝てしまう」

――福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級の資格をお持ちですね。

介護用ベッドや車いすなどの福祉用具は、当社が直接開発したり製造したりしてはいません。ただ、高齢者の方が使う福祉用具には使用者への思いやりが溢れています。そういった思いやりは、建材にも生かせるのではないかと思って、福祉用具専門相談員の資格を取りました。

福祉住環境コーディネーターは、例えば敷居の段差をどうすれば解決できるか、手すりはどのくらいの高さに付けるのが望ましいかなど、何ができるか、適切なのかという基本的な知識が必要とされています。製品を設計するときにはなぜその設計なのかという根拠が必要で、ちゃんと調べずに設計すると実は法律で規制されていて、始めからやり直しになることもあります。基本的な知識が足りないことに壁を感じていたので、この資格を取ることで乗り越えたいと思いました。

――では、仕事をする上では、どのようなことを心掛けていますか。

品質面では、デザインや機能性などいろいろな要素がありますが、一番大切なのは安全性だと思っているので、慎重に検証するよう心掛けています。

問題点をどうすれば解決できるか分からないときはつらいです。そういうとき、私は周りのいろいろな人に相談するようにしています。別の製品であっても過去の開発で似たような課題があることは意外と多く、その経験を聞くと解決のヒントになります。

製品の開発から発売まで、多くの人が関わるような仕事に携わっているため、その時々で伝えるべき人に正確に情報を伝え、抜け漏れや遅延なく進めていくことは容易ではありません。周りの人から快く協力を得るには、コミュニケーションや自分自身の仕事ぶり、信頼度も重要だと感じています。

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