東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、山形大学による研究チームは2018年4月17日、線幅1μm以下の銀配線を簡便・高速・大面積に印刷できる「スーパーナップ法」について研究し、技術の鍵となる銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性が両立するメカニズムを解明したと発表した。
フレキシブルな電子機器を製造できるプリンテッドエレクトロニクス技術に注目が集まる中、産総研などは2016年4月、スーパーナップ法を開発したと発表。約25μmが最小線幅だった従来の高精細印刷と比べ、スーパーナップ法の精細度は20倍以上。現在、同技術を用いて、透明で曲げられるタッチパネルセンサの量産化などが進められている。
ただしスーパーナップ法では、インク中に含まれた特殊な銀ナノ粒子が基材表面に選択的に吸着する仕組みに関して、高活性な銀ナノ粒子を大量に含んだインクが印刷に至る過程で安定なまま保たれる理由を解明できていなかった。
それが今回の研究により、インク中で銀ナノ粒子が凝集するメカニズムを詳しく検討した結果、銀ナノ粒子表面を保護するため、わずかに含まれている脂肪酸の分子鎖の挙動が、銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性を両立させるため、巧みに機能していることが明らかになった。
銀ナノ粒子の分散安定性は保護基と分散媒の組成比が最適な値でバランスした場合にのみ得られ、かつこのとき初めて、スーパーナップ法による超高精細印刷が可能になると説明している。
今後は、銀ナノ粒子の表面化学吸着メカニズムの解明を進めるとともに、新たな高機能ナノインクの開発と高度印刷技術への展開を推進していく考えを示している。