- 2018-6-10
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- Applied Physics Letters, Don David, IBM, コロラド大学環境科学共同研究所CIRES, ジョセフソン素子, 学術, 金属メッキ超電導体
コロラド大学環境科学共同研究所CIRESの研究チームが、電子回路基板などに容易に活用できる、金属メッキ超電導体を開発した。電気メッキにより、金(記号:Au)の層でサンドイッチされた極薄レニウム(記号:Re)層を作成したところ、約6Kの超電導臨界温度を示すことがわかった。超高速計算に向けた回路基板など、将来のスーパーコンピューター開発に利用できる可能性がある。この研究成果は、2018年4月30日の『Applied Physics Letters』誌で公開されている。
コンピューターの性能向上に超電導現象を利用する試みとしては、以前から絶縁体薄膜または常伝導金属薄膜を超伝導体でサンドイッチした「ジョセフソン素子」による高速スイッチング素子が、IBMを始めとする世界の企業や大学によって研究されている。しかし、超電導材料を回路基板に適用する場合、機械的取り扱いが難しく、酸化性が強いためハンダ付け特性に劣るなど、本格的な実用には至ってない。
CIRESの化学者Don David氏の研究チームは、回路基板で使用される金や銅などの薄膜に、複合的に電気メッキすることにより超電導性を付与することを試みた。特に硬質な金属で、高融点かつ耐酸化性も強く、ジェットエンジンにも使われるレニウムに着目した。
電気メッキによって毛髪の1/1000サイズという極薄Re層を作成し、金の層と複合的に積層したところ、液体ヘリウムの沸点(4.2K)よりも高い6Kで超伝導性を示すことがわかった。「臨界温度がこれほど高いことは驚きだった」と、David氏は語る。機械的な取扱いも容易で毒性が無いという、回路基板に理想的な特徴を持つものだ。
超電導材料は決して新しいものではないが、レニウムを使った金属メッキ超伝導体は、超伝導コンピューターの回路基板として、これまで検討された中で最高の材料だと、研究チームは考えている。特に電気メッキのプロセスは、スケーラブルであり、大量生産にも適している。研究チームは、この技術の特許を申請しており、既に幾つかの技術関連大企業および政府系支援機関からの注目を集めているという。