北海道大学は2018年7月31日、可視光を厚さ約30nmの空間へと効率的に閉じ込める光電極の開発に成功したと発表した。全可視光の85%以上を吸収可能で、従来の電極と比べて10倍以上となる効率で光エネルギーを化学エネルギーへと変換できる。
同大学の研究チームは以前から、革新的な太陽電池や人工光合成システムの開発につながる可能性があることから、極めて少ない物質量で効率的に可視光を利用できる金ナノ微粒子に注目してきた。
金ナノ微粒子は、局在プラズモン共鳴と呼ばれる現象を示し、ある特定の色(波長)を吸収・散乱する性質を持つ。金ナノ微粒子は光を吸収すると、金の中の電子が高いエネルギー状態になる。酸化チタン等の半導体に電子を与え、高い還元力を持った電子が水素イオンを還元して水素を、残った電子の抜け殻(正孔)が強い酸化力により水を酸化して酸素を発生させることができる。
しかしこれまでは、半導体基板上に金ナノ微粒子を一層付着させるだけでは、基板平面内の微粒子密度をいくら高くしても、金ナノ微粒子に光を十分吸収させることは困難だった。
そこで同研究チームは今回、酸化チタンでできた厚さ30nmの半導体を、金ナノ微粒子と金フィルムで挟み込んだ。金ナノ微粒子側から光を入射すると金フィルムが鏡として働き、光を効率的に酸化チタン層に閉じ込め、金ナノ微粒子に吸収させることができるようになった。閉じ込め機能のない電極と比べて、10倍以上の効率で光エネルギーを化学エネルギーへと変換できるようになったという。
今回の研究成果によって、プラズモン太陽電池や人工光合成系などの光エネルギー変換系のアンテナに加え、局在プラズモン共鳴を利用するさまざまな光化学反応系や化学センサーの高感度化にも応用が期待できると同研究チームは見込んでいる。