ナノエレクトロニクスの過熱を防ぐ「ナノサンドイッチ法」を開発

実験に使ったトランジスターは、基板としてSiO2、2D結晶としてTi3C2薄膜、被覆材料としてAl2O3を用いている。

ナノエレクトロニクスに用いられる2次元(2D)結晶に生じ易い過熱およびそれに起因する故障のリスクを、シリコン基板と極薄酸化物層でサンドイッチすることにより軽減する手法が考案された。イリノイ大学シカゴ校工学部の研究チームが、極薄アルミニウム酸化物層の被覆により、2D結晶からシリコン基板への熱伝導が促進されることを実験的に確認した。研究成果は、2018年9月4日に『Advanced Materials』誌に公開されている。

単原子層から2D結晶を活用しているシリコン基の電子デバイスでは、3D結晶に比較して数桁オーダーでデバイスの小型化が可能になるとともに、3D結晶には無いユニークな機能を発揮することができる。しかしながら、2D結晶を用いたナノデバイスには、2D結晶からシリコン基板への熱伝導が小さいため、過熱し易いという問題がある。

イリノイ大工学部機械産業工学科のAmin Salehi-Khojin准教授は、「2D結晶からの放熱が小さく、熱が蓄積されることでホットスポットとなって過熱や故障を誘起し、小型高機能デバイスの製造に対して障害になっていた」と語る。

2D結晶がシリコンに効率的に熱伝導できない理由の1つは、2D結晶とシリコン基板の間の結合が弱いことにある。研究チームは、この結合を増大して2D結晶からシリコンへの熱伝導を促進するため、2D結晶の上に極薄層材料を被覆する実験を行った。基板としてSiO2、2D結晶としてMXeneと呼ばれるTi3C2薄膜、被覆層としてAl2O3を用いて、シリコン基板と被覆層で両側からサンドイッチのように挟んだ「ナノサンドイッチ」トランジスタを作製した。その結果、室温において、2D結晶からシリコン基板への熱伝導が、2倍に増大することを見出した。

研究チームのモデル解析によれば、2D結晶からシリコン基板への熱伝導は、主として2D結晶内部の結晶面に直角な面外モード・フォノンと面内モード・フォノンの間のエネルギー交換によって決定される。2D結晶の上の被覆層により、面外モードへの熱移転が促進され、2D結晶とシリコン基板の界面を超えて、シリコン基板への熱伝導が増大すると考えられる。

Salehi-Khojin准教授は「このトランジスタは実験的なモデルだが、2Dナノデバイスの上に被覆層を付加することにより、シリコン基板への熱伝導を顕著に増加できることを実証できた。デバイスの過熱や故障のリスクを低減し、2Dナノエレクトロニクスの発展を促進することができる」とし、「他の被覆層材料についても実験し、さらに熱伝導を向上できないか検討する」と、今後の目標を語っている。

関連リンク

Nano-sandwiching improves heat transfer, prevents overheating in nanoelectronics

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