人間の持久力には越えられない壁があるという研究結果 米デューク大

Photo By: Cpl. Shaltiel Dominguez

人間の持久力は、鍛えれば鍛えるほど高くなるのだろうか、それとも限界があるのだろうか。そんな疑問に答える研究結果が、米デューク大学から発表された。

デューク大学の研究チームは、2015年に開催されたアメリカ横断マラソン「Race Across the USA(RAUSA)」を140日かけて走り抜いたランナー達のカロリー消費を分析し、人間は数日、数週間、数カ月続くような身体活動では、安静時の代謝量の2.5倍のカロリーしか消費できないことを発見した。研究者達によれば、世界最速のマラソンランナーでもこの限界を越えることはできないという。研究成果は、オンライン科学ジャーナル『Science Advances』に掲載されている。

RAUSAは、西海岸のロングビーチ近郊から東海岸のワシントンD.C.までの約5000kmを走る壮大なマラソンだ。その距離はフルマラソンを117回連続して走ることに相当する。研究チームは、1週間に6回のフルマラソンを5カ月近くにわたって走り続けたランナー達の毎日のカロリー消費をグラフ化し、それがL字型のカーブを描くことを発見した。エネルギー消費は比較的高く始まると、数日で急落し、その後のRAUSAの期間を通じて基礎代謝量の2.5倍で平坦になる。

これは、人間の身体が代謝を「シフトダウン」し、持続可能なレベルに留めようとする能力を持っていることを示唆している。また、持久力を必要とするイベントならば、極寒の南極大陸で500ポンドのそりを曳いても、夏のツールドフランスを走っても、カロリー消費はL字型のカーブを描くという。研究論文の共著者で、進化人類学のHerman Pontzer准教授は、「これは人間の可能領域を定めるもの」と、説明する。

研究者によれば、人の安静時代謝量の2.5倍というしきい値を越えると、体はカロリー不足を補うために自身の組織を分解し始める。そして、この限界は食物を分解する消化管の能力に起因する可能性があるとしている。

研究者達の知る限り、この限界を越えてレベルを維持した者はいないという。Pontzer准教授は、「これはエリートの持久系アスリートへの挑戦だと思う。いつの日か、誰かがこの上限を突破して、我々が何を忘れていたのかを教えてくれるかもしれない」と述べている。

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IS THERE A LIMIT TO HUMAN ENDURANCE?

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