低電圧で高輝度のペロブスカイトLEDを開発――新開発のアモルファス酸化物半導体を電子輸送層に用いる 東京工業大

(e)PeLEDの素子構造(f)発光写真

東京工業大学は2019年7月31日、ペロブスカイト型ハロゲン化物を用いて、低電圧駆動で超高輝度のペロブスカイトLED(PeLED)の開発に成功したと発表した。

近年、有機ELディスプレイが急速に普及しつつある。しかし、有機ELは、短い寿命や高い駆動電圧などの弱点があるため、新たなEL用発光材料の探索が現在でも行われている。

一方、低次元系のペロブスカイト型ハロゲン化物(CsPbX3、X=Cl、Br、I)、例えば、CsPbX3の薄膜などは、量子閉じ込め効果を有するため、蛍光量子効率(PLQY)が高い。しかし、PLQYは外部から光をあてたときに発光する効率を示すため、高いPLQYを有する発光材料だとしても、電子と正孔の供給がない限り光らないEL素子には適さなかった。

そこで、研究グループは、CsPbX3の持つ優れた電気的性質を利用しつつも、優れた特性を有する電子輸送層を用いることで、その特性を向上させる実験を計画した。具体的には、ZnとSiの割合によって電子親和力を連続的に変化させられるアモルファスZn-Si-O(a-ZSO)を開発。これをガラス基板上に成膜し、その上のCsPbX3薄膜の発光特性を調べた。結果、Zn/(Zn+Si)が80%より小さいa-ZSOを用いることで、ペロブスカイト層の励起子の閉じ込め効果が期待できることを確認した。

(a)薄膜の電子親和力(b) 薄膜のPL寿命及び発光写真(c)各基板に製膜したCs3Cu2I5 薄膜の発光写真

さらには、a-ZSOのZn/Si比が80/20である80ZSOを電子輸送層(ETL)に用いたPeLEDを作製し、その特性を調べた。その結果、CsPbBr3の緑色発光素子では、2.9 Vで10000 cd/m2、5 Vで500000 cd/m2に及ぶ低電圧超高輝度を実現(電力効率は33 lm/W)。さらに赤色発光素子では、20000 cd/m2の世界最高輝度が得られた。

研究グループは、この成果から、高性能PeLEDを実現するための有効な指針を得たと説明。今後は、同様な概念に基づき、新たな発光材料の探索に繋げていくことが重要だとしている。

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