発光特性を切り替えられるメカノクロミック色素を開発――機械的刺激で可逆的に変色

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横浜国立大学大学院 工学研究院の伊藤傑准教授らの研究グループは、機械的刺激を加えることで、紫外線照射下での発光波長が劇的に変化し、室温下では数秒程度で元に戻る「メカノクロミック色素」を開発した。研究成果は2019年9月12日、『Chemical Communications』のオンライン版に掲載されている。

圧力や熱などに反応する化学物質において、反応前の状態に戻す方法を突き止めて制御することは、研究上の大きな課題だ。このような可逆的な制御が可能になれば、環境刺激などを継続的に繰り返し検知できるシステムの開発が可能になる。

一方、物理的変化によって色が変化する「メカノクロミック発光(MCL)」と呼ばれる特性を備えた色素は、潜在的に多様な応用が考えられ、近年関心を集めている。しかし、望ましい特性を持つMCL色素を合理的に設計することは依然として非常に困難だ。

今回報告されているMCL色素は、チオフェンの誘導体だ。紫外線照射下で紫色の光を発し始めるが、研削などの機械的刺激に晒されると、紫色の輝きがわずかに青色に変わる。さらなる外部刺激を加えることで、化合物を回復することができ、再び紫色になる。

今回の研究では、DMQAと呼ばれる別の化学物質を加えることにより、機械的刺激で同色素がオレンジ色に変化することを発見した。また、紫色に戻すためには外部刺激を必要としなかった。

今回の結果をもとに、同研究グループは2種類の合理的な設計ガイドラインを定義した。1つは、色素の回復挙動が化合物のアルキル基の長さに起因しうるということだ。より長い、水素を含む炭素原子の鎖によって、色素は再結晶化による自己回復性を獲得する。もう1つは、DMQAと混合することで、発光波長の変化量を大幅に拡大できるということだ。

今回発見された、高コントラストで、自己回復するメカノクロミック色素は、ウェアラブルデバイスや偽造防止塗装といった次世代スマートデバイスへの応用が期待されている。

伊藤准教授によれば、次のステップは機械的刺激に対する色素の応答性を制御する合理的な設計ガイドラインを確立することだ。最終的には、異なる強度の機械的刺激に応じて段階的に発光色を変えられる材料を合理的に作り出すことで、革新的な感圧システムを開発することを目指すとしている。

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Tunable mechanochromic luminescence of 2-alkyl-4-(pyren-1-yl)thiophenes: controlling the self-recovering properties and the range of chromism

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