数学の能力に男女間で生物学的な差はないとの研究結果

Credit: Carnegie Mellon University

「数学の授業って難しいな」

かつて、こうしゃべるバービー人形は一部から反発を買い、販売会社は対応に追われた。しかし、似たような論争はしばしば起こる。その根底にあるのは、女性は生物学的に数学能力が欠けているためSTEM分野では成功しないという「神話」だ。

しかし、カーネギーメロン大学のJessica Cantlon教授が率いる研究チームは、機能的MRI(fMRI)を用いて子供の脳の発達について調査した結果、脳の機能や数学能力に男女差はないと発表した。研究結果は2019年11月8日付オンラインジャーナル『npj Science of Learning』に掲載されている。

研究チームは、3~10歳の104人(女子55人と男子49人)に足し算など算数の教育ビデオを見せて、視聴中の脳の活動を測定した。さらに、成人63人(女性25人と男性38人)にも同じビデオを見せて、子供グループの調査結果と比べた。

その結果、男子と女子の脳の発達に差はみられず、脳内で数学的技能を処理する機能にも男女で違いはないことが分かった。成人グループの結果と比べた場合も、男女の脳の成熟度は統計的に同等だった。

さらに、数学の発達度合いを測定するために、3~8歳の子供を対象に数学能力を測定する標準テスト「Test of Early Mathematics Ability(TEMA)」を受けた97人(女子50人と男子47人)の結果も調査したが、数学能力は子供たちの間で同等であり年齢や性別で差はみられなかった。

「男子も女子も脳内で数学ネットワークを同じように使っているだけでなく、その類似性は脳全体で明らかだった」と、研究論文の筆頭著者であるシカゴ大学のAlyssa Kersey博士研究員は語る。人間は一人一人違うように見えて実は同じだということが、改めて明らかになったようだ。

脳の活動には男女差がないのに、女性が数学やSTEM分野から遠ざかる理由は何か。研究チームは、その理由について社会や文化が関係していると考えている。以前の研究でも、男子のほうが空間認識を必要とする遊びを家族とすることが多いという結果が出ており、教師も数学の授業中に男子を優先して指導する傾向にある。研究チームを率いたCantlon教授は「典型的な社会化が、男子と女子との間の小さな違いを雪だるま式に悪化させている可能性がある」と語る。

今回は、簡単な足し算や数え方などに限定し、幼児期の発達に焦点を当てた調査を行ったが、研究チームは、空間処理や記憶などさらに幅広い数学スキルを対象に、継続して長期的な追跡をしたいと考えている。

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