MITの神経科学者のアドバイスによると、注意力を高めたいときや集中したいときは「脳波のアルファ波を弱くする」と良いらしい。
アルファ波とは脳波のうち周波数8~12Hzの成分であり、知覚情報処理に関わると考えられている。これまでの研究から、脳の部位のうち特に頭頂葉皮質において、アルファ波と注意力との間には強い相関があることが分かっており、アルファ波の減少は注意力の強化に何らかの関係があるという。しかし、アルファ波が注意力をコントロールしているのか、それとも注意力をつかさどる他のプロセスの単なる副産物であるのかは、はっきり分かっていなかった。
そこで研究チームは、被験者にスクリーンの真ん中にある格子パターンを見せるという実験を行った。被験者は脳磁図計測され、研究チームは、被験者の頭頂葉皮質の左側と右側のアルファ波のレベルから、左右の非対称性を算出。計測値の非対称性が大きくなると、スクリーン上の格子パターンのコントラストが上がるように設定した。
被験者は「コントラストを上げて格子パターンが見えやすくなるように意識すること」とだけ言われており、何が起きているのかは知らされていなかった。しかし、約10分間で20回ぐらい試行錯誤するうちに、意識的にコントラストを上げられるようになったという。
ここで利用したのは、脳の活動状態をリアルタイムにフィードバックすることで、脳が自律的に学習し活動を制御できるようにする「ニューロフィードバック法」だ。ニューロフィードバック法によって、被験者たちは無意識のうちにアルファ波の非対称性をコントロールできるようになっていた。
研究チームによれば、被験者たちは自分でコントラストを制御していることに気付いていたが、どうやって制御していたかは分かっていなかったという。
研究によると、脳の片側だけ訓練することもできる。左脳のアルファ波を抑えるように訓練すると右側の視野、右脳を訓練すると左側の視野に敏感になることも分かった。このように、アルファ波と視覚認知機能との間に因果関係を発見したのは初めてだという。
これらの効果がどのくらい続くのか、また、この種のコントロールが他の脳波でも実行できるのかについては定かではない。しかし、非侵襲的なニューロフィードバック法を使うことは、脳機能障害や問題行動に苦しむ人々の役に立つかもしれない。研究チームは、今後も検証を続けるとしている。
MITの研究チームによる研究結果は、2019年12月4日付で学術誌『Neuron』に掲載されている。