- 2020-1-13
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- Environmental Science & Technology, EU, スタンフォード大学, プラスチック, ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD), ポリスチレン, ミールワーム, 学術, 生分解性プラスチック代替材料, 発泡スチロール
スタンフォード大学は、発泡スチロールを餌として飼育したミールワームが、有毒な化学添加物を体内に蓄積することなく排泄し、他の動物用の安全なタンパク源となることを示した。この研究は2019年12月19日、『Environmental Science & Technology』に掲載された。
発泡スチロール(ポリスチレン)は、低密度で、かさばるため、リサイクルにかかるコストが高い。また、ポリスチレンにはヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)と呼ばれる難燃剤が添加されているが、これは内分泌かく乱から神経毒性まで、健康と環境に大きな影響を与える可能性が指摘されている化学物質だ。EUはHBCDを禁止することを計画しており、米国環境保護庁はそのリスクを評価しているところだ。
一方、鳥類や魚類、爬虫類など幅広い動物用の餌として飼育されているミールワームが、さまざまな種類のプラスチックを飼料にできることが知られている。ワームの腸内に、プラスチックを分解できる微生物がいるためだが、プラスチックに添加されている有害な化学物質がワームの体内に蓄積する可能性があり、プラスチックを飼料としたミールワームを他の動物の餌とした場合の安全性には、懸念があった。
今回の実験において、ポリスチレンを与えられたミールワームは、約半分を分解した小片として排泄し、残りの半分を二酸化炭素として排出した。そして添加物に関しては、HBCDの90%を24時間以内に、ほぼ全量を48時間後に排出し、懸念された生体への蓄積はほとんど起こらないことが分かった。
また、HBCDを多く含むポリスチレンを飼料として継続的に与えたミールワームは、通常の飼料を与えたミールワームと同じくらい健康で、ポリスチレンで飼育したミールワームを餌として継続的に与えられたエビも、通常の飼料で育てたエビ同様に健康だった。
ただし、ミールワームが排泄したHBCD自体の毒性が失われるわけではなく、他のプラスチック添加物がミールワームの内部で異なる結果を示す可能性もある。研究グループは、プラスチック廃棄物汚染に対するミールワーム由来の解決策に期待するものの、根本的な解決方法は、生分解性プラスチック代替材料と使い捨て製品からの脱却しかないとしている。