純チタンのナノサイズ微細構造形成を規格化――医療分野への応用に期待 早稲田大学と新潟大学

早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の教授 水野潤氏ら研究チームは2020年2月12日、新潟大学大学院医歯学総合研究科と共同で、純チタンのナノサイズ微細構造形成を規格化したと発表した。デンタルインプラントをはじめとした医療分野への応用が期待できる。

デンタルインプラントは埋め込まれた部位の骨と結合することで機能し、その粗面構造が骨形成を促進する。しかし、粗面構造はランダムな構造で、ナノサイズの微細構造が骨形成を促進する機序を解明するために規格化ナノチタン構造形成技術が求められていた。

研究チームは、半導体ナノ加工技術を用い、表面粗さ0.6nm、1.7nmの平滑基盤、高さ10、25、50、100nm、ピッチ100nmの規格化ナノチタン構造基板を作製。これまで技術的に困難だった純チタン表面構造をナノレベルで規格化した。

これまで規格化ナノチタン構造は、レーザーやスパッタリングによるものが中心だったが、半導体ナノ加工技術の紫外線ナノインプリントリソグラフィ、イオンビームスパッタリング、電子ビーム蒸着を用い、規格化ナノチタン構造を従来にない精度で任意に付与できる技術を確立した。この新規技術を用いて作製した線状ナノ構造チタン基板の表面での細胞挙動を検索したという。

高さ100nm、ピッチ100nmの線状規格化ナノ構造

平滑基盤に対する評価では、表面粗さ0.7nmの基板は表面粗さ1.6nm 基板に比べ親水性が高くなり、基板上で培養した細胞の細胞増殖能は低くなった。この結果は、一般的に考えられているものとは逆の結果だった。各種線状ナノ構造チタン基板上で細胞を培養した結果は、高さ100~50nmの構造表面では、細胞が構造に沿った配向性を示しながら分裂、増殖したが、25nm以下の高さでは配向性を示さなかった。

これらの結果から、細胞はその増殖能に関して表面粗さ1nm程度の構造サイズによって影響を受けるものの、形態的には25nm以上の構造に対して感受性を持つ可能性が高いことが明らかとなり、組織形成をナノサイズの規格化微細構造制御によって制御できる可能性が示唆された。

今回の研究により、生体材料に対する細胞の挙動をたんぱく質レベルで解析し、細胞分化等の意図的制御が期待できる。デンタルインプラント以外にも、医療分野への応用が期待でき、周辺組織制御可能な体内埋め込み型生体材料開発への重要な基盤技術となると考えられる。今後、意図的生体機能促進作用を持った生体デバイスの開発に繋げていくことを目指すという。

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