- 2020-3-17
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- SPICA(スピカ), フッ化物イオン導電性固体電解質, 京都大学, 兵庫県立大学, 固体フッ化物シャトル電池, 特殊環境中性子回折装置, 研究, 総合科学研究機構, 革新型蓄電池, 高エネルギー加速器研究機構
高エネルギー加速器研究機構は2020年3月12日、京都大学らと共同で、フッ化物イオン導電性固体電解質のイオン伝導メカニズムを解明したと発表した。今回の研究は上記に加え、兵庫県立大学、総合科学研究機構との共同研究によるものだ。
高エネルギー加速器研究機構によると、リチウムイオン電池の性能を凌駕する革新型蓄電池(ポスト・リチウムイオン電池)を開発する上で、固体フッ化物シャトル電池で使用するフッ化物イオン導電性固体電解質がキーマテリアルになる。蛍石型構造を持つフッ化バリウム(BaF2)は、電池性能にとっては高電圧下で利用できるというメリットが期待される反面、イオン伝導率が低いという問題がある。BaF2の一部のバリウム(Ba)をランタン(La)に置換することでイオン伝導率が大幅に向上することが知られているが、フッ化物イオン(F–)の分布やその伝導メカニズムは分からなかった。
今回の研究では、フッ化物イオン導電性固体電解質Ba0.6La0.4F2.4に対して、大強度陽子加速器施設 物質・生命科学実験施設(J-PARC MLF)の特殊環境中性子回折装置SPICA(スピカ)を利用して中性子回折実験を実施。同電解質の原子位置や核密度分布(散乱長密度分布)を精密に決定することに成功した。これにより、フッ化物イオン伝導経路の可視化が可能になり、準格子間拡散をベースとする拡散機構によってF–が伝導経路内を移動することを明らかにした。
今回のイオン伝導メカニズムの解明によって、フッ化物イオン伝導体のイオンの流れに対する理解が深まり、フッ化物シャトル電池の材料開発に貢献することが期待されるという。