少量の樹脂分で光架橋する3次元造形用インクを開発――透明シリカガラス部材の焼成時間を大幅短縮へ

横浜国立大学は2020年5月21日、ガラスやセラミックスの原料粒子間をわずかな樹脂分で光架橋する新しい3次元造形用インクを開発し、このインクでμmからcmスケールの構造を持つシリカガラス部材の3次元造形を製作できることを示したと発表した。また、このインクを使用することで、シリカガラス部材の緻密化と透明化に必要な脱脂/焼成時間を、従来手法と比べて1/4以下に短縮できるという。

従来からさまざまな種類のガラスやセラミックス材料の3次元造形が実証されてきたが、いずれの手法も低速で長時間にわたる脱脂工程が必須で、生産性の向上や製造費用の低コスト化が課題になっている。3次元造形用のインクに多量の可燃性有機分が含まれているため、脱脂工程でゆっくりと材料を加熱しないと有機物の熱分解が急速に進行し、ガスが多量に生成されて造形した構造体が壊れてしまうからだ。

そこで研究グループは、溶剤中に懸濁した原料微粒子間を少量の樹脂分で光架橋する新概念な3次元造形用インクの開発に取り組んだ。研究では、まず原料となる球形シリカ粒子を高濃度に溶剤中へ分散させた。この際、シリカ粒子の凝集を抑制するために、高分子分散剤として変性ポリエチレンイミンを粒子表面に吸着させた。

この分散体にごく少量の多官能アクリレートと光ラジカル開始剤を配合することで、紫外光や青色光の照射により「多官能アクリレートのラジカル重合」を進行させつつ、その反応熱により促進される「粒子に固定された変性ポリエチレンイミンと多官能アクリレート重合物間の反応(マイケル付加反応)」により、原料粒子間を架橋して分散液を硬化させる新しい仕組みの3次元造形用インクの開発に成功したという。

研究グループは、この3次元造形用インクの開発により、脱脂工程の長時間化を解決した。本研究成果は、今後3Dプリンターなどの光造形技術を活用したガラスや、セラミックス部材の高効率で低コストな製造技術の開発や競争につながることが期待できる。

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