- 2020-5-29
- 技術ニュース, 電気・電子系
- SOFC, プロトン(H+)伝導性電解質BaZr0.4Sc0.6O3-δ, 九州大学, 九州大学エネルギー研究教育機構, 九州大学大学院工学府材料物性工学専攻, 九州大学稲盛フロンティア研究センター, 宮崎大学, 研究, 電解質材料
九州大学、宮崎大学、科学技術振興機構(JST)は2020年5月28日、400℃の中温度で動作する固体酸化物型燃料電池(SOFC)に用いられる電解質材料を開発したと発表した。この電解質材料は、高いプロトン伝導性と化学的安定性を兼ね備えている。
開発した電解質材料は、プロトン(H+)伝導性電解質BaZr0.4Sc0.6O3-δだ。研究グループは今回、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)に、60%の高濃度でスカンジウムを添加すると、燃料電池動作の目標温度である400℃で結晶粒内と粒界を含んだ全プロトン伝導度が0.01 Scm-1を超えることを見出した。
これまで最適な置換元素とされていたイットリウム(Y)は、最大値を0.2程度の濃度で取ることから、プロトン伝導度の向上に向けた材料設計にYの高濃度化は不適だった。一方、スカンジウム(Sc)を置換したジルコン酸バリウムにおいては、高濃度化によって全プロトン伝導度が著しく向上するいう。
その高いプロトン伝導性は、400℃で200時間維持される。400℃、98%という高濃度の二酸化炭素雰囲気下でも、240時間以上安定であることが実証された。
固体酸化物型燃料電池にプロトン伝導性電解質BaZr0.4Sc0.6O3-δを用いると、中温動作で高価な白金や耐熱材料が不必要となることから、燃料電池の大幅なコストダウンが期待できる。