- 2020-6-11
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- 5G(第5世代移動通信システム), Applied Physics Letters, David Storm, Tyler Growden, テラヘルツ波, ピーク・トゥ・バレー電流比(PVCR), 共鳴トンネルダイオード, 学術, 窒化ガリウム(GaN), 米海軍研究所(NRL:Navy Research Laboratory)
5G(第5世代移動通信システム)サービスが始まりつつあるが、米海軍研究所(NRL:Navy Research Laboratory)の研究チームは、5Gのスピードを超えるテラヘルツ帯で動作するデバイスを開発した。窒化ガリウム(GaN)をベースとした共鳴トンネルダイオードを作製し、高い歩留まり、電流出力とスイッチング速度を記録した。研究結果は2020年3月19日付けの、『Applied Physics Letters』に掲載されている。
テラヘルツ波で動作するデバイスは、先進の5Gサービスよりもさらに高速な無線通信をはじめ、セキュリティ、医療、イメージング、センシングなどの分野へ応用できると期待されている。テラヘルツ領域デバイスとして候補に挙がっているものの1つが共鳴トンネルダイオードで、量子トンネル効果による超高速電子輸送を利用したヘテロ構造デバイスだ。
研究チームは、プラズマ支援分子線エピタキシャル法を利用して、GaNベースの共鳴トンネルダイオードを開発した。このデバイスの電流-電圧特性を調べると、負性微分抵抗特性、つまり電圧を上げると電流が減少する現象が、6Vまでの範囲で3カ所確認された。3000回のスイープによる再現性計測での標準偏差は、平均に対して0.1%未満。室温でのピーク・トゥ・バレー電流比(PVCR)は2を超え、これまで報告された値を上回る。
「ほかの研究者らが示唆したように、GaNベースの共鳴トンネルダイオードが本質的に遅くはないことを我々は実証した」と、論文の筆頭著者であるTyler Growden氏は語る。
共鳴トンネルダイオードがチップ上で満足のいく性能を発揮するには、試料の準備、均一な成長、各段階での製造プロセスの制御がカギとなる。その界面は原子レベルで鋭いことが必要で、散乱や漏れ電流の発生源に非常に敏感なため、従来の歩留まりは20%程度に留まっていた。研究チームは再現性の高いプロセスを開発することで、ダイオードの歩留まりを約90%まで上げることに成功した。
「これまで、GaNは製造の観点から取り扱うのが難しかった。こう言うのは嫌だが、我々が獲得した高い歩留まりは丸太から落ちるのと同じくらい簡単なもので、それはデバイスの設計によるところが大きい」と、共同研究者のDavid Storm氏は語る。今後も、出力の改善に向けて共鳴トンネルダイオードの設計を改良していくとしている。