英ランカスター大、太陽エネルギーを長期貯蔵できる材料を発見

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イギリスのランカスター大学の研究チームが、太陽からのエネルギーを捕捉するとともに、数カ月にわたって貯蔵でき、必要に応じて熱としてエネルギー放出できる材料を開発した。

これは、自己組織型多孔性材料として注目を集めている「金属有機構造体(MOF)」のナノ空隙に、光を強く吸収するアゾベンゼン分子を包接した材料であり、この分子が太陽光の吸収に伴ってエネルギー状態の高い幾何異性体へ転移することにより、エネルギーを長期間貯蔵して必要に応じて放出するというものだ。夏季に太陽エネルギーを貯蔵して冬季に活用することが可能で、再生可能なエネルギーを長期間貯蔵する新しい手法として期待される。研究成果が、2020年11月29日の『Chemistry of Materials』誌に公開されている。

剛直有機配位子と配位方向が規定された金属クラスターの間で錯体形成を行うと、金属原子が互いに有機部位で架橋された構造を有する周期性の高い結晶性化合物が合成できる。これがMOFであり、1997年に京都大学の北川進教授によって見出され、これまでにない特徴を有する自己組織型多孔性材料として注目を集めている。軽量であり高い比表面積を誇るため、ガス貯蔵、吸着分離用担体、導電性材料、不均一系触媒などへの応用が期待されている。また、MOFのナノ空隙に優れた機能を持つゲスト分子を取込むことによって、多様な複合材料を作る試みも追求されている。

今回ランカスター大学の研究チームは、MOFのナノ空隙に光を強く吸収する化合物アゾベンゼン分子を導入して、エネルギー貯蔵に利用することにチャレンジした。このMOF複合材料に波長365nmのUV光を照射すると、アゾベンゼン分子はトランス異性体からエネルギー状態の高いシス異性体に転移して形状を変える。ちょうど曲げられたスプリングがエネルギーを蓄えるのと同様に、光電スイッチ機能を通して高いエネルギーを保持する。アゾベンゼン分子が、ナノ空隙に変形したまま閉じ込められることで、エネルギーは長期間保存される。そして外部から熱の刺激を与えると、曲げられたスプリングが元に戻るように、正味28.9J/gのエネルギーを一気に解放する。保持エネルギーは少なくても4カ月貯蔵でき、また、MOF複合材料は固体で、化学的に安定で取扱いが容易なため、塗膜などにも展開できる。

研究チームは、「ゲスト分子やMOFの種類や構造を工夫することによって、光電スイッチとしての性能を更に向上できる可能性がある。将来的に、このような光電スイッチを高精度に配置することによって、CDやDVDのようにデータを分子レベルで記録保存することができるようになる。また、薬をナノ空隙中に固定し、光電スイッチを用いて生体内で必要に応じて解放するドラッグデリバリーにも発展させることができる」と、期待している。

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