芝浦工業大学は2021年4月14日、回転させずに押して捻る動きで穴をあけるドリルを開発したと発表した。捻りの動作で一度に複数の穴を加工できるという。
これまでの回転するドリルは、微小径のドリルほど回転数を上げる必要があり、エネルギー効率が悪く、形状精度の低下や加工部を冷却する必要などの課題があった。そこで、傾斜支柱の構造体(スクイザ)を利用し、振動によるスクイズ運動(並進と回転の複合運動)を発生させて、回転させずに穴を開けるドリルを開発したという。
研究では、加振機から加えられる並進運動に対して傾斜した支柱を設けたスクイザで、異方性の剛性特性を設計。並進と回転の複合運動であるスクイズ振動を発生させ、回転運動をドリルの先端に与えることにより、スクイザ/ドリル/ドリルホーンで構成されたシンプルな工具を並進方向に振動させるだけで、スクイズ振動による断続切削ができるという。回転モーターを使わずに加振周波数に合わせた周速数で切削できる。
印刷回路基板などへ直径100µm以下の微細穴をせん孔するには、スピンドルを通常100~300krpmで回転させて十分な工具周速を得る必要があるが、研究では振動によって容易に同様の周速を得られることを確認した。並進運動で穴を出入りするため、効率良く切りくずの排出と加工部の冷却ができ、一つの動力源で同時に複数の穴を加工できる。
今後は、適用できる材料の限界調査や加工条件の最適化を検討していく。