半導体量子ビットの確率的テレポーテーションに成功 理研

理化学研究所(理研)などの研究チームは2021年5月6日、半導体量子ドット中の電子スピン量子ビットを用いた「確率的テレポーテーション」に成功したと発表した。

研究チームは半導体基板上に金属電極を微細加工して、三重量子ドット配列構造を作製。転写したい情報を持つ入力ビット、情報が転写される出力ビット、両者の間で量子相関を伝達する補助ビットとして3つの量子ビットをそれぞれ機能させて、入力ビットの状態を出力ビットへ転写しようと試みた。

3量子ビットを搭載する電子スピン量子ビットデバイス

実験では、まず出力ビットと補助ビットの間で量子もつれを生成。その後、補助ビットを入力ビットのもとへと移動させて、補助ビットと入力ビットの間の量子もつれを検出した。パウリスピン閉塞という現象を応用して量子もつれを操作し、2つの量子もつれを介して入力ビットの状態を出力ビットに転写した。

量子テレポーテーションの手順

測定で得た出力ビットと入力ビットの状態を比較したところ、入力から推定される出力の状態と実際の測定で得た出力に正の相関があることを確認。入力ビットの状態が出力ビットへ転写されたと示していた。

一方、量子もつれの検出が出力に与える影響について調べたところ、検出に失敗した場合は入力によらず出力が一定となることが分かった。補助ビットを介した量子もつれを利用することが出力ビットへの状態転写に必要不可欠だと示したことになる。以上の結果から、量子もつれを介したテレポーテーションが成功していると判断した。

入力ビットと出力ビットの比較図

量子コンピューターの実用化に向けて、これまでは1つか2つの量子ビットを用いたアルゴリズムを中心に研究開発が進められてきた。次の段階として3つの量子ビットを用いたアルゴリズムの実現が望まれていたが、制御難易度が高く、実現例はごくわずかだった。今回の研究成果によって、3量子ビットのアルゴリズムを実現したことになり、大規模な量子計算に向けた研究開発が一層進むと見込んでいる。

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