- 2021-7-13
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- PSP計測法, スパースモデリング, ノイズ除去, 半導体圧力センサー, 固有直交分解(POD), 圧力変化, 小型低乱風洞, 愛知工業大学, 感圧塗料, 早稲田大学, 東北大学, 研究, 科学技術振興機構
東北大学は2021年7月9日、早稲田大学、愛知工業大学と共同で、微細な圧力変化をPSP計測法でも計測可能にする高精度のノイズ除去法を開発したと発表した。
東北大学によると、感圧塗料(PSP)の発光強度分布を測定することで表面圧力の分布を計測するPSP計測法は、センサーを設置した箇所のみしか測定ができない半導体圧力センサーなどによる点計測法に対して高い優位性を持つ。しかしPSP計測法では、カメラのショットノイズなどの影響を受けやすく、微小な発光強度変化がノイズに埋もれてしまうため、大気圧近傍の微小な圧力の変化を計測するのが難しかった。
今回の共同研究では、PSP計測結果の画像に対してスパースモデリングを用いてノイズを除去する方法を開発。これを適用することでノイズが除去された圧力分布を得ることに成功した。
同法の具体的な手順は次のようになる。ノイズの含む原画像に固有直交分解(POD)によるモード分解を実施。得られたモード分解データから、流体現象を効率的に表現できる位置を特定した。その空間位置において、得られている時系列データをフィルタリングし、フィルタリングされた時系列データを説明できるように各モードの係数を決定する。その際にできるだけ簡単なモデルで表現できるようにスパースモデリングを用いた。
東北大学流体科学研究所の小型低乱風洞において、同法の妥当性を評価する実証実験を実施した。「角柱後方に生じるカルマン渦列によって生じる圧力分布」を同法および半導体圧力センサーによって計測した。その結果、半導体圧力センサーの設置箇所において、センサーによる計測値とPSP計測法による計測値のずれは2%以内という高い一致を示し、精度も十分であることが実証された。
今回の開発により、PSP計測法による微細な圧力変化の計測が可能になり、家電製品や鉄道車両などの圧力変化が小さい対象の流動実験解析に同法が適用できるようになることが期待される。また、半導体圧力センサーの場合のように配線の必要がないため、回転体表面などの従来法では難しかった対象に対する圧力分布測定が可能になることが期待される。
なお同研究は、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業、および東北大学流体科学研究所一般公募共同研究において行われた。