鎖帷子(くさりかたびら)がヒント――圧力に応じて硬さが変わる素材を開発

カリフォルニア工科大学らの研究チームは、粒状の部品を鎖帷子のようにつなげて、外力によって柔らかくも硬くもできる素材を開発した。自重の50倍以上の重さを支えることができ、医療用サポーターや橋梁への展開が期待できる。研究結果は、2021年8月11日付けで『Nature』に掲載されている。

「折り畳み可能な柔らかい状態から、耐荷重性を持った硬い状態まで、剛性を制御できる生地を作りたいと思っている」と、研究チームのChiara Daraio教授は語る。2005年公開の『バットマンビギンズ』で主人公がまとうマントのように、普段はしなやかだが、滑空するときはグライダーのように硬くなる素材を考えているようだ。

剛性を変えられる材料は、身近にも存在する。Daraio教授は例として、真空パックのコーヒー粉を挙げた。開封前は、固体のようにぎゅっと締まっているが、一度開封すると粉の詰まりがなくなり、さらさらと粉を注ぐことができる。これは「ジャミング転移」として知られる現象だ。

研究チームは、中空構造のパーツを連結させてジャミング転移可能な素材を設計した。円形や正方形、八面体など様々なパーツを考案し、ポリマーや金属による3Dプリントとシミュレーションから最適な構造を検討した。パーツ同士の平均接触数が大きいほど剛性の変化は大きく、中空の八面体がつながってできた素材は、中世の鎖帷子のようにも見える。

加圧すると、パーツ同士がかみ合って目が詰まり、剛性が高まる。「粒子スケールで引張荷重を支えるという性能はゲームチェンジャーになる」とシミュレーションを担当したJosé E. Andrade教授は語る。実験では、真空ロックされた鎖帷子状の素材は、自重の50倍以上に相当する1.5kgの重りを支えることができた。

こうした素材は、スマートウェアラブル衣類へ展開できる可能性がある。柔らかい時は軽量で体になじみやすく、着心地が良い衣類として、硬い時はサポーターやプロテクターとして使える。ケガの治り具合に合わせて硬さを調節できるギプスとして使えるかもしれない。

さらに、橋のような大型構造物にも利用できる。運搬時は柔らかさを活かして小さく折りたたみ、設置時は広げて硬化させる。この場合、材料に通したケーブルを引っ張って、目を詰まらせることを想定しているという。「パーカーの紐のようなもの」だとDaraio教授は語る。現在、こうしたケーブルのほかに、熱応答性をもつ液晶エラストマー(LCE)を埋め込むなど、素材の硬さや形状を制御する方法を検討している。

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Material Inspired by Chain Mail Transforms from Flexible to Rigid on Command

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