材料の元素種情報からミクロ構造解析できる高ノイズ耐性の新解析法を開発 熊本大学ら

イットリウム周りで酸素原子が四面体配位している模式図

熊本大学は2021年12月10日、東京工業大学らと共同で、材料の元素種の情報だけで原子間の距離を正しく解析し、材料のミクロ構造を解析する、ノイズ耐性の高い新たな解析法を開発したと発表した。

デバイス材料のミクロ構造の解析には、広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルの計測が行われる。しかし薄膜試料が対象の場合、X線の吸収強度が弱いためにEXAFSのS/N比が小さくなってしまい、ミクロ構造の高精度の解析が困難だった。

今回の研究では、EXAFSスペクトルから材料のミクロ構造を解析するため、電子波多重散乱理論に基づいたスパースモデリングとベイズ推定を組み合わせた、ノイズ耐性の高い新たな解析法を開発した。

同手法では、まず複素Hedin-Lundqvistポテンシャルによる光電子波の2体多重散乱理論に基づく基底関数を用いて、EXAFSデータのスパースモデリングを実施。その解析結果から、ベイズ自由エネルギーを小さくするように最適化することで、データに重畳するノイズを推定し、解釈しやすい動径分布関数を得る方法を開発した。

多重散乱理論では、元素種によって光電子波の散乱振幅が異なること、また、散乱に伴う光電子波の位相変化、振幅減衰を量子力学に基づいて評価することから、原子間距離を正しく推定することが可能になった。

同解析法はノイズ耐性が高いため、これまで解析が困難だった薄膜試料のミクロ構造解析も可能になる。今回同解析法を用いて、光スイッチ材料として期待されるイットリウム酸水素化合物薄膜における、イットリウム周りの酸素の配置構造の決定に成功した。

今回の開発は、熊本大学、東京工業大学、筑波大学、あいちシンクロトロン光センター、日本原子力研究開発機構などによる共同研究の成果となる。また、開発にあたっては、科学技術振興機構、量子科学技術研究開発機構、九州シンクロトロン光研究センター、東京大学、物質・材料研究機構らの支援を受けた。

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