バージニア工科大学のエンジニアが、2000年の歴史を持つ日本の切り紙技術を応用し、粘着力を60倍に高めながら、容易に剥がせる粘着テープを開発した。
一般的に、強力な接着剤は剥がれにくく、剥離可能な接着剤はその強度を制限することで剥がしやすくする。いわば接着性と剥離性は相反関係にあると言える。強力なテープを剥がそうとする場合、母材に過度の力が加わらないよう、テープの端から少しずつ剥がそうとするだろう。
研究チームは、材料の特性を調整しなくても既存の材料の形状を変えれば、接着剤の強度と剥離性を両立させることができるのではないかと考えた。その方法を探るため、切り紙の手法を利用した。フィルムに戦略的に切れ目を入れることで、粘着力を高めながら簡単に剥がせることを発見したのだ。
普通のテープは、剥がす際にテープの長さに沿って一直線に剥離される。研究チームは、巧みにデザインされた切り込みをテープに加えることで、強力な粘着力を持ったまま、特定の方向には簡単に剥がせるテープを開発した。このテープを剥がそうとすると、切り込みパターン全体が接着した状態で、横一列のパターンを同時に剥がすことになり、より強い剥離力を必要とする。だが、切り込みの逆方向から剥がす場合は、パターンを少しずつ剥がすことになるため、容易に剥がすことができる。
最適に設計された切り込みは粘着特性を向上させ、粘着性を正確にコントロールすることができる。切り込みのデザインが、テープを剥がすのに必要な力の大きさを決定する。このアプローチでは、長方形の切り込みの間隔、寸法、面積を慎重に実験することで、テープの可逆的な粘着性を微調整できる。最も強固な粘着力が得られたのは、切り込みの上下間スペースを広くとり、左右のスペースは狭くした場合だったという。
このアプローチは、ロボットによる把持、健康モニタリング用ウェアラブル、製造業における組み立てやリサイクル工程など、さまざまな用途に広く応用される可能性がある。研究チームは、コロラド大学ボルダー校とも協業し、与えられたテープの領域に最適な切込みパターンを簡単に作成するためのソフトウェアを制作して、レーザーカッターでカッティングするシステムを構築するなど、多種多様の接着剤に対する応用を目指している。