TEMPO酸化CNFの蓄電性向上に結合水が大きく寄与 東北大、静岡大、日本製紙

東北大学未来科学技術共同研究センターの橋田俊之特任教授らの研究グループは2023年11月2日、静岡大学、日本製紙と共同で、TEMPO酸化CNFの蓄電性に、結合水の存在が大きく寄与することを発表した。同固体蓄電体の使用温度は~150℃と広範囲で、従来の蓄電池と対照的に耐水性があることが実証された。

地球環境保全、カーボンニュートラルの観点から、再生可能エネルギーの利用が拡大しているが、効率的な利活用に向けた課題も指摘されている。バイオマス素材である木材は、炭酸ガスを吸収すること、生分解性であることから、カーボンニュートラル素材として、木材パルプ等から生産されるセルロースナノファイバー(CNF)が期待されている。しかし、現時点では、応用が機械的、化学的分野に限定されている。

TEMPO酸化CNFは、18本のナノフィブリルからなり、周囲をC6位の一級水酸基に置換したCOONa官能基により架橋されている。世界に先駆けて、研究グループはこのTEMPO酸化CNFが蓄電特性を発現することを発見した。今回、実用化に向けて蓄電特性を改善するため、伝導機構を解析し、解明した。

CNFは水分、湿度に弱いと思われていたが、150℃まで蓄電特性を有する。また、CNFの温度が上昇すると、CNF中の水分の蒸発量と交流電気抵抗が増加。この時、ナトリウム23(23Na)イオンは、核磁気共鳴(NMR)スペクトルピークの半価幅が温度の上昇に伴って減少するとともに、ピークの位置が移動した。このことから、23Naイオンは運動性が増加し、水に取り込まれる量が増加していることがわかった。

また、近赤外線分析により、NaOHの存在を示す波数4770cm-1における強度が増加。このことから温度の上昇に伴い、NaOHとして存在する量が増加したことがわかった。このような現象は、TEMPO酸化CNF内に存在する結合水に起因している。

蓄電体の電子伝導は、CNF周辺のC6位を置換したCOONa官能基に形成される結合水で、バンドギャップエネルギーが増大し、蓄電量の漏洩が防止される。

研究の成果は、500Vまでの高電圧短時間充電、空中や真空中からの電荷の蓄電に道を開く可能性がある。また、ナノサイズ径CNFの使用とそのシートの積層化による蓄電体の大容量化が示唆され、「ペーパーエレクトロニクス」への展開が期待される。

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酸化処理したセルロースナノファイバーの高い蓄電性の… | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

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