高温時でも性能低下しないペロブスカイト太陽電池を開発

香港城市大学(CityU)の研究チームが、ペロブスカイト太陽電池の電荷抽出性能を向上する、自己組織化単分子膜(SAM)の熱的安定性を向上することに成功した。65℃近傍の高温で1200時間作動後も、初期の光電変換効率の90%以上を維持できることを示し、強い日射でデバイスが高温化しても性能劣化を防げることから、今後の広汎な実用化が期待される。研究成果が、2023年10月20日に『Science』誌に論文公開されている。

2009年に日本の宮坂力博士によって開発されたペロブスカイト太陽電池は、簡便な塗布プロセスなど安価な溶液法で作製できるとともに、22 %を超える高い光電変換効率を持ち、次世代の太陽電池材料として高い注目を集め、世界中で研究開発が進められている。近年は、従来型に比べ製造プロセス温度を下げることができ、製造方法が簡素化して製造コストを低減できることから、電子と正孔の取り出す方向が従来のデバイス構造とは逆になっている、「逆型p-i-nペロブスカイト太陽電池」が活発に研究されるようになっている。しかしながら、正孔電荷抽出性能を向上するために用いられるSAMは熱的不安定性があり、高温に曝されると性能が低下するという問題がある。「高性能なスポーツカーが、暑い日にはオーバーヒートして性能が低下するようなものだ」と、研究チームは説明する。

研究チームはSAMの熱的不安定性の解決にチャレンジし、「高温に曝されると、SAM分子内の化学結合が破壊され、デバイス性能に悪影響を与える」ことを発見した。そこで、ホスホン酸(MeO-4PADBC)SAMを作成するとともに、ホスホン酸部位のアンカー効果を利用して、正孔電荷抽出層の酸化ニッケルのナノ粒子膜表面上に積層した。その結果、基板上のSAMの結合エネルギーが増進され、酸化ニッケル層とペロブスカイトの界面が顕著に安定化するとともに、電荷抽出効率も促進できることがわかった。熱的耐久性が顕著に向上して、65℃近傍の高温における1200時間作動後も、電池の初期変換効率が90%以上維持されて、25.6%の高効率を発揮することを確認した。

「本研究におけるブレークスルーによって、これまでペロブスカイト太陽電池の広汎な実用化を妨げていた主要な障害を解決できた。高温によって妨げられてきた環境や気候分野への活用限界を拡大し、持続可能な高効率エネルギーへの転換に関するゲームチェンジャーとなる」と、研究チームは期待している。

関連情報

Pivotal breakthrough in adapting perovskite solar cells for renewable energy published in ‘Science’

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