世界初の技術である、電界ろ過法を用いた電界フィルターを発表 名古屋大、三菱化工機

名古屋大学大学院工学研究科向井研究室は2023年11月22日、三菱化工機と共同で、電界フィルター「Ele-Fil(エレフィル)」を発表した。世界初の技術である電界ろ過法を用いている。

膜分離をはじめとする従来のろ過法は、ろ材が微粒子を濾し取る直接ろ過方式だが、ろ過はケーク形成や目詰まりによる性能低下という恒久的な問題を有する。そこで、ろ液中の粒子は弱いマイナスの電荷を帯びていることから、クーロンの法則を利用することに着目し、Ele-Filを開発した。

電界ろ過法は、積層構造の電極ろ板に形成された電界バリアの電気的反発作用を利用した非接触ろ過方法となる。電界ろ過法により、ろ過室に供給されたスラリー液(原液)を精密にろ液と濃縮液に分離でき、ナノ(nm)レベルの細かい粒子のろ過に適応する。

従来のろ過は、細孔より小さな粒子をろ過していく過程で、細かい粒子がすリ抜ける場合があるほか、 ケーク形成やろ材の目詰まりが発生する。Ele-Filを使用したろ過では、電気泳動と電極ろ板との反発作用で、電極ろ板面から離れる荷電粒子に対する電気的作用力を利用し、ろ過する。荷電している粒子と電極ろ板は、電気的作用力により、非接触状態を維持し、ろ過精度が向上する。

Ele-Filの利用により、電気的な反発作用で、ろ材細孔よりも微細な粒子をろ過できる「微細粒子のろ過」、ろ材細孔が大きく、細孔の閉塞を抑制する「ろ材閉塞の抑制」、ろ紙、ろ布を電極ろ板として、ろ過精度がMF膜、UF膜レベルを有する「高いろ過精度」、外部電源の印加電圧調整でろ過精度を調整できる「ろ過精度の調整」、高いろ過圧をかけない、生体バイオマスなどのろ過に対応する「対象物の広い選択性」が期待される。

特有の三次元ネットワーク構造を持つナノファイバーろ材は、一般的なろ材よりさらに精密かつ安定的にろ過操作を継続できるが、長時間ろ過を続けると一般のろ材と同様、ケーク層が表面に形成される。また、機能の低下したろ材を洗浄して再利用する際に、ろ材内部の粒子を完全に排除することが非常に難しいという側面もある。

しかし、電界ろ過との組み合わせで、ナノファイバーろ材の内部や表面に粒子が滞留せず、ろ過操作をしながら同時に粒子が排除されるため、大きな内部空間を生かして、ろ液を高速で流していける。さらに、ナノファイバーろ材の本来の分離精度よりずっと細かい粒子の分離にも対応する。

三菱化工機は、主に電界ろ過法を用いたろ過技術の開発と装置化、名古屋大学向井研究室は三菱化工機が開発した技術にナノファイバーろ材を組み込み、Ele-Filのさらなる高性能化を図る。開発したろ過技術は既に特許出願済みで、社内公募の結果を踏まえ、Electric Filterの略称であるEle-Filと命名された。

電源、電極とろ材構成をコア技術とした電界ろ過法は、分離操作ノウハウを組み合わせた融合技術で、ナノ粒子を含む多種多様な物質の分離に対応する。また、既存の分離装置との組み合わせで機能拡大や能力向上が図れるほか、実験用の分析装置にも技術転用できる。

関連情報

三菱化工機と名古屋大学、電界ろ過法を用いた世界初の技術 電界フィルター®「Ele-Fil™」を共同発表 – 名古屋大学研究成果情報

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