北海道大学は2023年11月24日、同大学低温科学研究所とミシガン大学の研究グループが、常温下では成長が難しい鉱物の一種ドロマイト(CaMg(CO3)2)が堆積岩として天然に豊富に存在している理由を解明したと発表した。他の鉱物の形成メカニズムの解明や、効率的な結晶材料の合成手法の開発につながる可能性も期待できる成果だとしている。
ドロマイトは天然には多量に存在しているものの、常温常圧の実験では沈殿させることができず、どのように生成されるのかが長年の謎だった。
ドロマイトはCaの層とMgの層が交互に重なって構成されることから、ミシガン大学の研究グループは、CaとMgがどのように秩序化されていくのか、一定の過飽和度でシミュレーションを行い、無秩序化したCaとMgが100%秩序化されるには、107年かかることを突き止めた。
そのうえで、過飽和度を変動させてシミュレーションを行ったところ、過飽和と未飽和を繰り返すことで、ドロマイトの乱れた表面が秩序化するための時間が短縮されるのを確認。これらの結果に基づいてドロマイトの成長速度を見積もると、最大7桁大きくなることが分かった。
ミシガン大のシミュレーションを検証するため、北海道大学では未飽和と過飽和を繰り返す周期的な環境でドロマイトを成長させる実験を行った。実験では、電子線による水の放射線分解を利用して過飽和度を変化させる手法を考案し、わずかな粒子サイズの変化を捉えられる透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果、80℃の溶液を用いて3840回の未飽和-過飽和のサイクルを繰り返したところ、2時間で100nm(330層)以上のドロマイトを成長させることができた。
自然界では、降雨と晴天、雨期と乾期などで過飽和と未飽和が普遍的に起きていることから、研究グループは「こうした過飽和と未飽和を行き来する周期的な変動がドロマイトの成長には重要であることを示す成果だ」としている。
他の鉱物でも同様に環境の変動が形成速度に影響している可能性があり、今後、地質学的な議論に発展することも考えられる。また、温度や濃度などの条件を変動させ、結晶材料を短時間で形成する手法の開発にもつながると期待される。
今回の研究成果は2023年11月24日、Science誌に掲載された。
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