東京都立大学は2024年1月11日、乾燥した粉や砂を濡らすと強度が増すメカニズムを解明したと発表した。コンクリートやセメントなどとは違って、ひび割れにも強い、新たな粉粒体材料の開発につながる成果だとしている。研究成果は1月9日、英文誌Communications Physicsに掲載された。
砂や粉などの乾燥した粉粒体は山のように盛り上げてもすぐに崩れてしまうが、湿らせた粉粒体は強度が大幅に向上することが経験的に知られている。現実に近い不均一に濡れた粉粒体を使った実験例が少ないため、強度が増すメカニズムについては未解明だった。
同大学の研究グループは、近年、子供用玩具として販売されているシリコンオイルコーティングされた砂に注目。コーティングされた砂は経年変化が少なく、安定的に力学特性を制御できることから、通常の硅砂と混ぜ合わせて、混合比による力学特性の変化を調べた。
実験では、混合比を変えて作成した粉粒体ブロックを圧縮し、そのときの圧縮率に対する反発力を測定。構造の硬さの指標であるヤング率を計算した。その結果、混合比が60%以上になるとヤング率が急激に上昇し、その後はほぼ一定となることがわかった。
さらに混合した砂の内部構造の変化を調べるため、数値シミュレーションしたところ、混合比が60%を超えると、領域全体に大きな剛性クラスターが広がり、パーコレーションしていることを確認。ヤング率の上昇は、剛性クラスターがパーコレーションしたため、と結論づけた。
また、研究グループは靭性を調べるために、各混合比で作成した粉粒体ブロックを大きく圧縮したときの様子を観察。すると、圧縮によってコーティング砂が衝突し、新たな結合がつくられるため、亀裂が入らずに変形し、壊れにくいこともわかった。
研究グループは「混合比が60%と100%ではほとんど物性が変化しないことは興味深い」とし、40%は殺菌作用を持つ粒子や熱吸収粒子など、他の機能性粉粒体に置き換えることが可能だとしている。こうした特徴を生かせば、強度も靱性も高く、さらに機能性を持った新たな粉粒体材料の開発につながると期待を寄せている。
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ニュース :: 【研究発表】粉粒体材料における硬さと靱性のメカニズムを解明〜強度と靱性を持った粉粒体材料の新規開発に期待〜 | 東京都立大学