世界初、ダイヤモンドのn型チャネル動作によるMOSFETを開発 NIMS

物質・材料研究機構(NIMS)は2024年1月25日、世界初となるダイヤモンドのn型チャネル動作による「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)」 を開発したことを発表した。モノリシック集積化(1つの半導体基板内に複数のデバイスを集積)に向けて耐環境型の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路の実現、ダイヤモンドのパワーエレクトロニクス応用に対して重要な一歩となる。

ダイヤモンド半導体は、原理的に、高温、高放射線被曝環境(原子力発電の炉心近傍等)などの極限環境で、高い絶縁耐圧や高速スイッチングなどの優れた特性を発揮できる。

その利点を生かし、環境安定性に優れた制御系の集積回路に利用するために、高機能化CMOSの実現が期待されているが、CMOS構造にはp型とn型の双方の導電性チャネル形成が必須となる。しかし、ダイヤモンドは、n型チャネルMOSFET形成がこれまで実現されていなかった。

研究チームは今回、高品質単結晶n型ダイヤモンド半導体成長技術をベースに、n型チャネルダイヤモンドMOSFETを開発。低濃度のリンをドープした原子的に平坦なテラスを有する高品質n型ダイヤモンドの結晶成長に成功したものをチャネル層に用いたMOSFET構造にて、高濃度でリンをドープしたダイヤモンドをソースおよびドレインのコンタクト層として使用した。

これにより、大幅に接触抵抗を低減。n型チャネルのトランジスタ特性を確認した。作製したMOSFETの動作を調べた結果、ゲート電極にかける電圧により、ソースとドレイン(n層)のコンタクト間のチャネルに流れる電流(ドレイン電流)を制御でき、その極性から電子(n型)伝導性を世界で初めて確認した。

ドレイン電流は室温から300℃までほぼ4桁増加し、トランジスタ性能の重要な指標である電界効果移動度は300℃において約150cm2/V・secの高い値を示した。他のワイドギャップ半導体nチャネルMOSFETの同一温度域での移動度と比較して十分に高い値となっている。

また、高周波動作に関しては、300℃の高温でマイクロ秒レベルのスイッチング速度が得られた。ゲート振幅を広げることで、チャネルの導電率が増加するため、さらに高速のスイッチングが期待できる。

研究の成果は、省エネパワーエレクトロニクス、スピントロニクス、モノリシック集積した微小電気機械システム(MEMS)センサー等への応用に向け、低損失、軽量な耐環境CMOS集積回路の実現につながることが期待される。

将来、放射線検出器やMEMSセンサー用の混合信号集積回路の要件を満たすように、n型MOSFETデバイス形状を最適化し、より高周波のギガヘルツ(GHz)動作に向けて高周波特性の向上を試みる。さらに、p型、n型ドーピング制御、薄膜形成技術を高度化し、ダイヤモンドCMOS回路実現に向けた研究を開始する。

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世界初のn型導電性チャネルダイヤモンド電界効果トランジスタを開発 | NIMS

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