3Dプリンタ技術を用いたチタン製の水電解電極を開発――高電流密度条件下でも高効率で水素製造が可能 横浜国大と三菱マテリアル

三菱マテリアルおよび横浜国立大学は2024年1月31日、3Dプリンタ技術を用いたチタン製の水電解電極を共同開発したと発表した。

近年、水素はCO2を排出しないクリーンエネルギーとしてニーズが高まっている。水素の製造技術としては、100℃以下の純水および電気を用いて、高純度な水素を製造する「固体高分子型(PEM)水電解」が注目されている。

一方で、PEM水電解はシステムコストが高いほか、酸化イリジウムなどの貴金属触媒を要することが課題となっていた。

両者による研究グループは今回、水電解電極として一般的な材料であるチタン材料を対象とし、三菱マテリアルの粉末焼結技術を3Dプリンタ技術に適用した。

これにより、水を分解する電極部分と、水電解後の酸素を排出する拡散部分を一体化した2層構造を形成。同構造により、電極内部で生じた酸素ガスの滞留を抑えることが可能となった。

三菱マテリアルは、空間設計自由度や解像度に優れるバインダージェット方式の3Dプリンタを採用し、2層構造を実現した。バインダージェット方式とは、薄く敷いた粉末に結合剤を塗布して積層し、焼結して部品を製造する方式だ。

構造が異なる2層からなる電極は、各電極の層に要する空間設計のスケールが異なるため、従来の製法では一体化して製造できなかった。

また、同電極では、電解後の酸素気泡用の排出経路を形成。4A/cm2以上の電流密度でも、拡散過電圧の上昇を低減することが可能となった。

さらに、同経路は水を反応部に供給する流路機構にもなっており、同電極のみによる高電流密度での電解が可能。このほか、今回開発した技術では、電解セルに応じて最適な電極構造を製造できる。

同電極を用いることで、高電流密度条件下でも高効率に水電解システムを稼働させることが可能。貴金属触媒などの使用量低減により、水素製造のコスト低減にも寄与する。

両者は今後、実用化に向けた電極構造の開発、試作を継続する意向となっている。

なお、両者は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の水素利用等先導研究開発事業の成果である、電解槽の性能を電解質膜の抵抗分極や電極触媒の活性化分極、電極の集電抵抗、拡散過電圧といった要因別に分けて解析する評価技術を活用。2層構造の有効性を見出している。

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