バイオインクを使い、成長し機能する脳組織の3Dプリントに成功

ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、3Dプリンティングによる機能性脳組織の作製に世界で初めて成功した。この3Dプリント脳組織は、典型的な脳組織のように成長し、機能することが可能だ。アルツハイマー病やパーキンソン病など、神経疾患や神経発達障害の研究に役立つ可能性がある。研究成果は、『Cell Stem Cell』誌に2024年2月1日付で公開されている。

研究チームによると、今回開発した3Dプリンティング技術は、従来法と比べて集積方向が異なっており、従来の垂直積層に対して、新手法は水平方向に積層していくものだ。これまでよりも柔らかいバイオインクゲルを用いて、iPS細胞由来のニューロンが、まるで卓上に鉛筆を並べていくかのように水平に配置される。この組織は構造を保っているものの、ニューロンが互いに成長し、コミュニケーションをとるのに十分な柔らかさがある。水平に積層しているため組織は比較的薄く、ニューロンが培地から酸素と栄養素を得ることが可能だ。

ニューロンは同じ層の内部だけでなく、培地を介して層を超えて結合し、人間の脳内と同様なネットワークを形成する。このネットワークの中で、ニューロンはコミュニケーションを取り合い、シグナルを送り、神経伝達物質を通じて相互作用をする。また、バイオインクゲルに追加したサポート細胞とも適切なネットワークを形成した。さらに大脳皮質と線条体を3Dプリントすると、驚くべきことがわかった。脳の異なる部分に存在する異なる種類の細胞を3Dプリントしても、非常に特殊かつ特異的な方法で互いにコミュニケーションをとることができたのだ。

この3Dプリンティング技術は、細胞の種類や配置を制御できる。これは、研究用途のミニチュア臓器である脳オルガノイドにはない性質だ。開発した新技術は、どの種類のニューロンにも用いることができ、自由に組み合わせることが可能だ。脳の発達、人の発達、発達障害、神経症性障害などの分子メカニズム研究に利用することができる。ウィスコンシン大学マディソン校のSu-Chun Zhang教授は、「ヒトの脳細胞やどのように脳がコミュニケーションしているのかを理解する上で、非常に強力なモデルになるでしょう。幹細胞生物学、神経科学、さまざまな神経疾患や精神疾患の病態に関する考察が変わる可能性があります」と述べている。

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