接着剤などの接着/剥離時のメカニズムを分子レベルで解明 東北大学とファインセラミックセンター

東北大学は2024年3月8日、ファインセラミックスセンターらと共同で、最先端の透過型電子顕微鏡法(TEM)による計測と分子シミュレーションを組み合わせることで、無機材料の表面化学状態が有機材料(接着剤)の界面剥離挙動や接着強度などに大きく影響することを、分子レベルで解明したと発表した。同大学によると世界初となる。

接着現象を支配する因子は大きく化学的相互作用と機械的相互作用があるが、これまで2つの相互作用と接着や剥離現象との関連は、根本的には理解されていなかった。特に化学的相互作用の一種で、無機材料の表面化学状態が接着剤の分子構造や界面剥離挙動に及ぼす影響はほとんど解明されていなかった。

今回の研究では、まず機械的相互作用の影響を除外するため、表面が平滑なシリコン(Si)基板にエポキシ樹脂を塗布して加熱硬化させた、化学的相互作用のみを評価できる接着界面を設計。走査透過電子顕微鏡法(STEM)による電子エネルギー損失分光(EELS)測定によって、接着界面を超高分解能で化学組成分析した。

分析した化学組成分布を反映した接着界面の計算モデルに反応硬化分子動力学シミュレーションを適用し、接着界面近くに存在するエポキシ樹脂の架橋構造やシリコン基板表面への吸着状態などを可視化する方法論を確立した。

これらの手法を用いて分析した結果、接着界面では、これまで考えられてきた樹脂と基板間の水素結合などの分子間相互作用に加えて、シリコン基板の表面化学状態に応じて界面近くに存在するエポキシ樹脂の当量比が増減することが分かった。さらに、その当量比の変化に応じてエポキシ樹脂の架橋構造や樹脂の機械特性が大きく変化することも明らかとなった。

また、エポキシ樹脂剥離後にはシリコン基板表面に微量の樹脂が残存し、シリコン基板の表面化学状態によってその残存樹脂の厚さなどが変わることも分かった。

今回の研究によって接着界面近くの分子構造とマクロ的物性との相関関係が明らかになった。これにより、耐久性に優れた複合材料や環境負荷の少ない接着技術の開発などの実現に貢献することが期待されるという。

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接着と剥離のメカニズムを計測と計算の融合で分子レベ… | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

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