350℃以上でも優れた特性――航空宇宙用途が可能な耐熱アルミニウム合金を開発

中国の天津大学は2024年5月8日、同大学の研究チームが耐熱温度を350~500℃にまで拡大できる、画期的な酸化物分散強化(ODS)アルミニウム(Al)合金を開発したと発表した。粉末冶金法により、Al合金マトリックスに5nmサイズの超微細酸化マグネシウム(MgO)ナノ粒子酸化物を均一に高密度分散させたものであり、500℃において200MPaの引張強度とともに優れた耐クリープ特性を示す。航空宇宙用のエンジンや主要構成部材など、高温環境におけるAl合金の活用に道を開くものと期待される。研究成果が、2024年4月26日に『Nature Materials』誌に公開されている。

ナノスケール酸化物を均一分散させたODS合金は、非常に高い高温安定性を持つ微細酸化物を用いて、ピンニング効果により高温における結晶粒成長と転位運動を抑制することで、高温の引張強度や耐クリープ特性などの機械的性質を向上する。粉末冶金やメカニカルアロイングなどによって製造されており、Fe基やNi基スーパーアロイなどをマトリックスとして、1000℃以上の超高温に曝される航空機やロケットのエンジン燃焼器の部材などに応用されている。一方で、酸化性の強いAl、Mg、Ti、Zrなどの合金をマトリックスとして用いるODSに関しては、ほとんど研究されていなかった。

航空宇宙や輸送車両などの産業分野では、軽量かつ高比強度および耐食性などの特徴を有するAl合金が主要構造材料として用いられているが、「これらの用途分野においてもスピード向上や一層の軽量化が求められ、将来的にはAl合金の耐熱限界200℃を超える温度領域における耐熱性が必要になる」と研究チームは考え、350~500℃における耐熱性を顕著に向上できるODSAl合金を創成することにチャレンジした。

具体的には、グラフェン状の表面被覆が自発的に形成され、表面エネルギーを極めて低く減少させた5nmサイズの超微細MgOナノ粒子を得て、これを微細分散酸化物として用い粉末冶金法によりODS Al合金を試作した。その結果、MgOナノ粒子が凝集粗大化することなく、微細なままAl合金マトリックスに高密度に微細分散できることを確認した。また、MgOナノ粒子表面とAl合金マトリックスの間の整合性が高く、界面における空孔拡散が効果的に抑制されることから、Al合金にとっては非常に高温である500℃においても、200MPaの引張強度とともに優れた耐クリープ特性を示すことが明らかになった。「これは、従来のAl合金を6倍以上も超え、また数桁も高い高温安定性に相当するもの」と、研究チームはその優れた物性を説明する。

現在、産業界および研究機関と連携して、航空宇宙用エンジンや重要部品に向けた耐熱Al合金の開発を進めている。「この新しいプロセスは、シンプルでコスト効率が高く、また大量生産が容易なため、近い将来に400℃を超える耐熱性の高い軽量Al合金の実用化を目指す。これはAl合金に限定されるものではなく、他の金属にも適用できるため、高温用途における高耐熱性合金の分野を大きく発展させることができる」と、研究チームは期待している。

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