AIを活用した自己修復送電網――数ミリ秒で電力経路を再設定

米テキサス大学ダラス校は2024年6月21日、同大学と米ニューヨーク州立大学バッファロー校の共同研究チームが、数ミリ秒で電力経路を自動で変更して停電を防ぐAIモデルを開発したと発表した。同技術は、自己修復送電網と呼ばれ、嵐で送電線が損壊した場合でも、AIが問題を検出して人の介入なしに修復できる。

送電網は、発電施設と送電線、変圧器、配電線などで複雑に構成され、電源から消費者に電気を供給している。しかし、故障により電力経路の変更が必要になったとき、代わりの経路を決定するのに要する時間は、人手だと数分から数時間かかる場合がある。

研究チームは、ネットワークテストでさまざまな状況を想定し、停電が発生する前に電力をユーザーに転送する代替経路の自動特定に成功した。同システムは、AIを活用してミリ秒単位で電力経路を自動で再設定できる。

同システムは、電力配電ネットワークを構成する要素間の複雑な関係をマッピングするために、グラフ機械学習を使用している。グラフ機械学習は、さまざまな部品の配置関係やシステム内の電力経路を表現できる。研究チームは、電力システムと数学、機械学習を融合し、配電システム内のさまざまな相互関係を体系的に表現する方法を探求した。その後、機械学習フレームワークを統合したネットワークを使用し、電力配電システムの停電管理を効率化する方法を調査した。

テキサス大学のJie Zhang准教授は、「私たちの目標は、できるだけ早く多くのユーザーに電力を送るための最適な経路を見つけることです。しかし、本システムを導入するには、さらに研究が必要です」と説明した。

同システムは、電線故障により電力が遮断された場合、スイッチを使用して再構成し、近くの利用可能な電源から電力を引き出せる。研究チームは、今後、停電後に電力網を修復する技術の開発を目指す。

同研究成果は2024年6月4日、『Nature Communications』誌に掲載された。

関連情報

Researchers Engineer AI Path To Prevent Power Outages – News Center | The University of Texas at Dallas

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