固体リチウムイオン電池における高イオン伝導率を記録する、ユニークな分子結晶を合成

米コーネル大学は2024年10月3日、同大学の研究チームが合成した超分子多孔性結晶が、記録的な高イオン伝導率を達成したと発表した。同材料は、安全な固体リチウムイオン電池の開発につながる可能性があるという。

リチウムイオン電池は、再生可能エネルギー社会への移行に必要な技術だ。従来のリチウムイオン電池では、イオンが液体の電解質を介して電極間を移動する。しかし、液体電解質は電極間に樹状突起を形成し、電池のショートや発火を引き起こす可能性を持ち、安全上の課題となっている。

同課題を克服する方法として、固体電解質の研究が世界中で進められている。固体電解質は樹状突起の形成を防ぎ、安全上の問題を解決できる一方で、イオンが固体中をゆっくりと移動するため、電池の充放電速度が液体電解質と比較して遅くなるといった問題を生じる。

そこで研究チームは、固体電解質内で高濃度のリチウムイオンがよりスムーズに移動できるような材料を合成した。同材料はイオンが通過できる穴を持つ、かご状分子と大環状分子が、水素結合によって自己集合した3次元ナノ多孔性結晶だ。

同材料は、イオンを貯蔵できる大きな空間とイオンを輸送できる多数の流路を持ち、分子結晶の固体リチウムイオン電解質としては過去最高の、8.3×10-4S/cmのイオン伝導率を達成した。

大環状分子とかご状分子は以前から知られていたが、2つの分子のユニークな形状を利用して複雑な構造の自己組織化を導く方法は、未開拓の分野だという。研究チームは現在、これらの分子の異なる構造を持つ材料の合成に取り組んでいる。

同研究成果は2024年9月9日、「Journal of the American Chemical Society」誌に掲載された。

関連情報

Fused molecules are building blocks for safer lithium-ion batteries | Cornell Chronicle

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