- 2024-11-14
- 技術ニュース, 電気・電子系
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産業技術総合研究所(産総研)は2024年11月13日、希少金属インジウムを含まないCIS型薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させる技術を発表した。CIS型化合物の中でも、特にトップセル材料として適した広禁制帯幅という特性を持つ光吸収層の品質が向上する。
タンデム型太陽電池は、現在普及している太陽電池よりもさらに高い光電変換効率が期待できるが、安価、高性能、高信頼性(安定性)の要素をすべて満たす、短波長光吸収用トップセル材料の開発が課題だった。
CIS型化合物は、軽量で柔軟性のある太陽電池にも対応する材料として注目されており、約1.1eV程度の比較的禁制帯幅が狭いCIS型太陽電池は製品化もされている。しかし、トップセルとして用いることができる禁制帯幅約1.6eV以上(短波長の光吸収に特化)のCIS型太陽電池で高い光電変換効率を得ることが難しく、技術開発が求められていた。
今回、1.7eVの広禁制帯幅を有するCIS型化合物(CuGaSe2)薄膜に裏面電界効果を持たせるためのアルミニウム添加手法を考案し、インジウムを含まないCuGaSe2薄膜太陽電池の高性能化技術を開発した。インジウムを含まない広禁制帯幅のCIS型薄膜太陽電池としては、初めて12%を超える光電変換効率を達成している。
CuGaSe2光吸収層の製膜中に、光吸収層の表面から裏面方向に向かって含有量が多くなる傾斜をつけてアルミニウムを添加した。さらにアルカリ金属化合物も添加し、欠陥形成を抑制できる効果を見いだした。今回作製した太陽電池は、未封止の状態で数カ月放置した後も性能が低下せず、CIS型太陽電池の優れた特長を維持していた。
開発した技術は、アルミニウムの添加でCuGaSe2光吸収層裏面側の伝導帯下端を押し上げ、エネルギー帯に傾斜構造を形成する。さらにアルカリ金属化合物の添加により、アルミニウム添加で副作用的に形成される結晶欠陥を抑制する効果を得た。
今回の成果は、太陽電池に加え、水分解水素生成用光カソードとして光電気化学セルなどさまざまなエネルギー変換デバイスへの応用も期待できる。今後、開発した技術を改良し、より高効率な太陽電池の実現を目指す。将来的には、多様な材料を組み合わせ、安価で高性能、かつ長期信頼性にも優れるフレキシブルタンデム型太陽電池の実現を目指す。