高速列車ハイパーループの試験施設で走行記録を達成 スイス連邦工科大学

© Swisspod

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は2024年11月5日、真空チューブ列車であるハイパーループの試験施設を使用して、走行記録を樹立したと発表した。この実績は同じくスイスのヴォー州立大学工学経営学部(HEIG-VD)、Swisspod Technologiesと共同で推進中の「LIMITLESSプロジェクト」の成果だ。

LIMITLESS(Linear Induction Motor Drive for Traction and Levitation in Sustainable Hyperloop Systems)プロジェクトでは、ハイパーループの動力システムの開発を進めている。軽量インフラをベースとして、持続可能で効率的な未来の輸送システムの構築を目指す。

プロジェクトのなかでEPFLの研究チームは、動力機構であるLIM(Linear Induction Motor)を開発している。これは、ハイパーループの推進システムを構成する主要部分で、高速域での性能向上を狙っている。

今回の記録は、EPFLにあるハイパーループの試験施設で達成された。この施設は実寸の12分の1スケールで、直径0.4m、円周125.6mのチューブを低圧環境に制御した状態で、合計82回の試験を実施した。

実験では、50ミリバールの低圧環境のもと11.8kmの距離を走行して、時速40.7kmの最高速度を記録した。この走行距離は実寸に換算した場合、ジュネーブ―ベルン間、またはサンフランシスコ―サクラメント間の距離に相当する141.6kmとなり、最高速度は時速488.2kmに相当する。

この実験施設は、ハイパーループに必要な多様な技術について、迅速な試作と試験を支援している。研究チームは、推進力、通信インフラ、パワーエレクトロニクス、熱管理などのサブシステムの性能を綿密に監視する。そのうえで、加速、巡航、惰行、制動の各シナリオにおけるエネルギー消費、推力変動、LIMの応答、制御を評価した。

LIMITLESSプロジェクトでは、ハイパーループのカプセルについて、高速電磁推進に関する基本的な挙動などの側面を理解することに成功した。この知識を活用することで、浮上と推進機能を高いエネルギー変換効率で単一モーターへ統合することに成功した。

EPFLの施設における今後の試験は、LIMをベースとしたハイパーループの推進機構と浮上機能について、効率性などを向上させた改良版の検証を進める。さらに、システムの現実的な能力や限界、展望を探り、商用化を加速するためのデータを提供していく。

この戦略的アプローチでは、管理された小規模な環境で段階的に技術を進歩させ、エンジニアリングと研究チームが費用対効果の高い開発を、迅速な反復プロセスで実施した。研究チームは、このアプローチを活用することで、より大規模な技術導入の前に効率性、安全性、スピードなどの特性を体系的に改善できると説明している。

関連情報

Record broken for the longest Hyperloop trial – EPFL

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