ペロブスカイト層から効率的に正孔を取り出す、テトラポッド型正孔回収単分子膜材料を開発 京都大学と九州大学

京都大学は2024年8月9日、同大学化学研究所の研究グループが九州大学と共同で、ペロブスカイト太陽電池において、ペロブスカイト層から効率的に正孔を取り出す、テトラポッド型正孔回収単分子膜材料(4PATTI-C3)を開発したと発表した。

これまで、ペロブスカイト層の作製法の改良によって光電変換効率が向上してきた。しかし、ペロブスカイト層で光吸収により生成した電荷(正孔と電子)を選択的に取り出す電荷回収材料の開発が特性向上のための課題となっている。従来の材料では、ペロブスカイト層に届く光が減少する、熱安定性や耐久性が低下するといった問題があった。

研究グループでは、以前にトリアザトルキセンの平面骨格に3つのアルキルホスホン酸基を導入したトリポッド型単分子膜材料(3PATAT-C3)を開発した。この分子をペロブスカイト太陽電池の正孔回収単分子材料として用いることで、高い光電変換効率と安定性を持つペロブスカイト太陽電池が得られることをすでに実証している。しかし、PATAT誘導体は正孔の回収効率は高いものの、単分子膜の表面が疎水的になり、ペロブスカイト材料の極性溶液を塗る際に弾かれてしまう。これが原因で大面積かつ高品質なペロブスカイト層の作製が困難となっていた。

今回の研究では、ペロブスカイト層に対して上向きに張り出した極性官能基を持つマルチポッド型正孔回収単分子膜材料(PATTI)を開発した。同官能基の導入によって、ペロブスカイト層との密な相互作用ができ、大面積かつ高品質なペロブスカイト層の作製が可能になる。

さらに、アンカーとしてアルキルホスホン酸基(PA)を4つ導入したテトラポッド型4PATTI-C3などを合成した。4PATTI-C3の溶液から透明電極にスピンコートすることで、従来の単分子膜材料と異なり、ペロブスカイト前駆体溶液に対して濡れ性の高い単分子膜が得られることを明らかにした。4PATTI-C3では、従来のトリポッド型PATAT誘導体と同程度の吸着量を持つことを確認した。また親水性も向上していることも確認した。

テトラポッド型4PATTI-C3の単分子層を正孔回収層に用いた逆型ペロブスカイト太陽電池のミニセル、およびミニモジュールで、それぞれ21.7%および21.4%の光電変換効率を達成し、100時間の連続光照射後でも97%以上の出力を保つ高い耐久性を実現した。

関連情報

ペロブスカイト太陽電池の高性能化に向けた濡れ性の高いテトラポッド型正孔回収単分子膜材料PATTIの開発 | 京都大学

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