太さは髪の毛の200分の1――世界一細いスパゲッティを作製

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は2024年11月21日、同大学を中心とする研究チームが、太さが人間の髪の毛の約200分の1という世界で最も細いスパゲッティを作製したと発表した。このスパゲッティは食用に作られたものではなく、ナノファイバーと呼ばれる極めて細い繊維状の物質が、医療や産業において幅広い用途を持つことに着目して開発された。

ナノファイバーの中でもデンプンを原料とするものは、有望とされている。非常に多孔質で水や水蒸気を通すが、細菌は通さないため、傷の治癒を助ける包帯に利用できる可能性がある。また、骨再生の足場や薬物輸送への応用も期待できる。従来のデンプン由来のナノファイバーの作製法は、植物細胞からデンプンを抽出し、精製する必要があった。その過程では、多くのエネルギーと水を必要とする。

そこで、研究チームはより環境に優しい方法として、小麦粉などデンプンを多く含む原料から、エレクトロスピニング(電界紡糸)法を用いて直接ナノファイバーを作ることにした。できあがったスパゲッティの太さはわずか372nmだ。通常のスパゲッティは小麦粉と水を合わせたものを金属の穴に通して作る。研究チームによると、この極細スパゲッティは、作製方法以外は普通のスパゲッティと同じだという。小麦粉を材料とするエレクトロスピニング法は、タンパク質やセルロースなどの不純物により粘性が高まるため、純粋なデンプンを材料とするエレクトロスピニング法よりも難しい。そこで、研究チームは水の代わりに、デンプンの巨大ならせん構造を分解するギ酸を使用した。積み重ねられたらせん構造は、ナノファイバーの構成要素として大きすぎるためだ。ギ酸分子は、麺が空中を飛んで金属板に到達する前に蒸発する。

エレクトロスピニングで作製した「ナノパスタ」は幅2cm程度のナノファイバーマットを形成しているため肉眼で見えるが、1本1本のスパゲッティは一般的な顕微鏡でも見ることができず走査型電子顕微鏡で太さを測定した。これまでに世界で最も細いとされていたスパゲッティは、イタリアのサルデーニャ島のパスタ職人が手作業で作った太さ400μmのものとされているが、今回のスパゲッティはその約1000倍細いことになる。

研究チームは次のステップとして、分解速度や細胞との相互作用、大規模生産の可能性など、ナノパスタの特性を調べたいと考えている。

研究成果は、『Nanoscale Advances』誌に2024年10月30日付で公開されている。

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