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科学者ら、シアノバクテリアを使って二酸化炭素を再生可能なプラスチックに変換

英マンチェスター大学の研究チームは2024年12月19日、実験計画法と呼ばれる手法を用いて重要工程パラメーターを最適化し、シアノバクテリアのシトラマル酸生産能を23倍向上させることに成功したと発表した。シトラマル酸は、パースペックスやプレキシガラスなど再生可能プラスチックの前駆体となる化合物だ。

シアノバクテリア(藍藻)は光合成を行う微生物で、二酸化炭素を有機化合物に変換する。温室効果ガスである二酸化炭素を価値ある物質に変えられるため、産業利用が期待されている。しかし、シアノバクテリアの成長は遅く、効率も限定的であることから、大規模な産業利用は難しかった。

今回の研究では、研究用途でよく用いられているシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803株を使用した。シトラマル酸は、ピルビン酸とアセチルCoAという2つの主要代謝物質から単一の酵素ステップで合成される。光強度や二酸化炭素濃度、栄養分の利用可能性など工程パラメーターを微調整することで、シトラマル酸の生成量を大幅に増やした。研究初期のシトラマル酸の生成量はわずかなものであったが、実験計画法により複数因子間の相互作用を系統的に検討することで、2Lの光バイオリアクター内でシトラマル酸の生成量が6.35g/Lまで増加した。1日あたりの生成量は1.59g/Lになる。

5Lのリアクターにスケールアップすると光の供給の問題で生産性はやや低下したが、バイオテクノロジーのスケールアッププロセスにおいて、このような調整は管理可能であることが示されている。

今回の研究意義は、プラスチックに留まらない。ピルビン酸とアセチルCoAは、バイオテクノロジーの観点において重要な多くの化合物の前駆体だ。そのため、今回の研究で実証された最適化技術は、バイオ燃料から医薬品までさまざまな物質生産に応用できる可能性がある。

研究チームは、さらに手法を改良し、効率性を維持しながら生産規模を拡大する方法を開発する予定だ。また持続的に製造可能なバイオベース製品の幅を広げることを目指し、今回の手法をシアノバクテリアの他の代謝経路に適応させる方法についても検討している。

研究成果は、『Biotechnology for Biofuels and Bioproducts』誌に、2024年12月5日付で公開されている。

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