- 2025-1-28
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- Advanced Materials, Li+配位カルボキシメチルグアーガム(CMGG), エレクトロスピニング法, クーロン効率, デッドリチウム, デンドライト, ポリアクリルアミド(PAM), ポリマー, リチウム金属電池, リチウム(Li)金属アノード, 中空ナノファイバー保護層, 保護層技術, 固体電解質界面(SEI), 学術, 電気化学ポテンシャル, 韓国科学技術院(KAIST)

Credit: Advanced Materials (2024). DOI: 10.1002/adma.202407381
韓国科学技術院(KAIST)の研究チームは2024年12月12日、リチウム金属電池の寿命を750%伸ばすことに成功したとの成果を発表した。
リチウム金属アノードは、理論上の比容量が高く、電気化学ポテンシャルが低い(標準水素電極に対して-3.040 V)という優位性から、従来のアノードの代替品として登場した。
しかし、リチウム金属アノードは、特に樹枝状の結晶構造であるデンドライトの有害な成長と、充放電サイクルを繰り返す際のデッドリチウムの形成などの問題により、クーロン効率が低下し、体積が大きく変化する。この現象は爆発の危険性が生じる可能性があり、リチウム金属アノードの実用化を妨げていた。
この慢性的な問題は、リチウム金属と有機液体電解質との間の活発な界面反応により、リチウム金属表面に形成される固体電解質界面(SEI)に起因している。SEIの成長を制御することが、電極の可逆サイクルとリチウム金属の寿命にとって非常に重要になる。
但し、電解液との人工的な界面を形成するためにリチウム金属の表面にコーティングを施す従来の保護層技術は、有毒なプロセスと高価な材料に依存している。そのため、リチウム金属アノードの寿命の改善には限界があった。
この限界に対処するため、KAISTの研究チームは、物理的および化学的手段によってリチウムイオンの成長を制御できる、中空ナノファイバー保護層を開発した。この保護層は、生体適合性のあるポリマーである、Li+配位カルボキシメチルグアーガム(CMGG)とポリアクリルアミド(PAM)を主原料とする。これらは、水を唯一の溶媒とする、環境に優しいエレクトロスピニング法によって製造された。
このナノファイバー保護層は、電解液とリチウムイオン間の可逆的な化学反応を効果的に制御する。繊維内の空洞が金属表面へのリチウムイオンのランダムな蓄積を抑制することで、リチウム金属表面と電解液の界面を安定化させる。
試行の結果、この保護層を備えたリチウム金属アノードは、従来のリチウム金属アノードに比べて寿命が約750%向上した。これにより、300回の充放電を繰り返したあとで、93.3%の容量を維持することに成功した。
さらに研究チームは、この天然保護層が土壌中で約1カ月以内に完全に分解することも確認し、製造から廃棄に至るまで環境に優しい性質であることを証明した。製造から廃棄まで、電池がもたらす環境負荷が喫緊の課題となる中、生分解性を有するこの水系製造法は、次世代環境電池の実用化に大きく貢献するとの期待がある。
研究成果は2024年9月1日に、『Advanced Materials』誌に掲載された。