
東京科学大学は2025年1月24日、従来よりも低温かつ低圧でアンモニアを製造できる新触媒「ヒドリド鉄触媒」を開発したと発表した。
窒素肥料などに利用されるアンモニアは、ハーバー・ボッシュ(HB)プロセスによって生産されてきた。しかし、HBプロセスで生産するためには、高温、高圧の条件が必須であり、大量にエネルギーを消費することが課題だった。
今回の研究では、従来の触媒とは異なる触媒構造のデザインにより、金属鉄粒子上にアルミニウムヒドリドを載せたヒドリド鉄触媒を開発した。同触媒は、アンモニア製造中にアルミを加えた赤錆から自動的に生成され、従来の触媒よりも低温かつ低圧で多くのアンモニアを製造できる。
現在、大きな比表面積を持つ機能性の材料(担体)に金属ナノ粒子を固定化させる「担持触媒構造」の触媒が主流だ。しかしこの方法は、重量に対する触媒性能は高くなるが、容積に対する触媒性能が低くなる欠点があった。そこで今回、担持触媒を逆転させた構造を採用した。さらにこの構造で電子を強く与えられる電子供与体として、アルミニウムヒドリドを開発した。
アルミニウムヒドリドは、元々複雑な手順によって合成される材料だ。しかし、今回簡単な方法で金属鉄粒子の表面にナノスケールのアルミニウムヒドリドを固定化して、ヒドリド鉄触媒を構築することに成功した。ヒドリド鉄触媒では、50℃の低温からアンモニアを製造でき、既存のアンモニア製造工場で使用すると従来の280%以上エネルギーリターンを増幅させることができることも確認された。

ヒドリド鉄触媒の製造と電子顕微鏡写真
ヒドリド鉄触媒の量産化はすでに目算がたっており、同触媒による安価なアンモニア製造は今後5年以内に実現する見込みだという。