- 2025-3-24
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- Nature Materials, アールト大学, ハイドロゲル, バイロイト大学, ポリマー, モノマー, 人工ゲル, 人工皮膚, 剛性, 粘土ナノシート, 自己修復, 自己回復特性

Illustration by Margot Lepetit, Aalto University.
フィンランドのアールト大学とドイツのバイロイト大学の研究チームは2025年3月7日、高い剛性と柔軟性を併せ持ち、自己修復が可能な人工ゲルの開発成果を発表した。この人工ゲルは、人工皮膚などへの応用が期待されている。
人間の皮膚には、ゲルのような特徴がある。高い剛性と柔軟性、驚異的な自己治癒力で、24時間以内に怪我が完治することもある。ただし、人工素材による再現は難しく、高い剛性もしくは自己回復特性の片方は再現できても、同時に再現することはできなかった。
研究チームのハイドロゲルは、通常は柔らかくふにゃふにゃした触感のハイドロゲルに、極薄で特別仕様の粘土ナノシートを加えた構造だ。ナノシート間のポリマーが密に絡み合い、高度に秩序化された構造で、ハイドロゲルの機械的特性を改善して自己修復も再現した。
この素材の特長は、ナノシートの組織化された配列と、その間に絡み合うポリマーにある。ナノシートを含む水にモノマーの粉末を混ぜてUV(紫外線)ランプを照射すると、個々の分子が結合してゲルになる。薄いポリマー層が小さな毛糸のように互いに絡み合い、分子レベルでは非常にダイナミックで可動性があり、切断すると再び絡み合うゲルができる。
このゲルは、ナイフで切った4時間後には80~90%が自己修復し、24時間後には完全に修復する。厚さ1mmのハイドロゲルには、ナノシートが1万層も重なっており、人間の皮膚と同程度の硬さと伸縮性と柔軟性をもつ。
この研究成果は、学術誌『Nature Materials』に掲載された。