量子暗号通信で世界最長となる600km以上の通信距離を実証――デュアルバンド安定化技術を開発 東芝

東芝は2021年6月9日、量子暗号通信の通信距離を拡大するデュアルバンド安定化技術を開発したと発表した。世界最長となる600km以上の通信距離の実証に成功したという。

現在広く利用されている暗号通信の暗号鍵は、将来、量子コンピュータによって解読される可能性が指摘されているが、量子暗号通信は、物理法則によって通信中の暗号鍵の盗聴を検出できることが保障されている。

現在製品化されている量子暗号鍵配信システムの通信距離は100~200kmで、都市内のネットワークへの適用に限られているが、今回開発した技術を用いることにより、安全な暗号通信で都市間/国家間を接続できる。また、この技術は量子情報通信の長距離化へ応用でき、量子コンピュータが長距離量子情報通信リンクで接続された量子インターネットの構築に必要な基礎技術となる。

この環境変動の影響を補正することができるデュアルバンド安定化技術は、東芝欧州社ケンブリッジ研究所で開発。位相変動を補正する参照信号には、2つの異なる波長の光を用いている。

第1の参照信号には連続波を用いることで位相の高速な変動を連続的に補正し、第2の参照信号は量子ビットと同じ波長にすることでその波長で起こる微小な変動を補正し、位相調整の精度を高めているという。この技術により、数百kmの伝送でも、1550nmの光信号の波長に対して常に数%の範囲内で位相変動を高精度に抑制でき、通信距離を延ばせる。

量子暗号鍵配信へのデュアルバンド安定化技術の応用は、世界初となる。さらにこの技術を、同社独自の量子暗号鍵配信プロトコルであるツインフィールドQKD(Quantum Key Distribution)に適用することで、世界最長となる600kmを超える量子暗号通信を実証した。これまでの到達限界である距離500kmの鍵配信速度は0.1bit/秒だったが、今回の実証での鍵配信速度は1bit/秒、これまでの約400倍の40bit/秒を確認したという。

暗号鍵配信性能

ケンブリッジ研究所での実証試験の様子

同社グループは、今回の成果の5年以内の実用化を目指す。また、同成果を含む技術をベースに、量子情報技術サービスのためのプラットフォームや世界規模のセキュア通信の構築、クラウドベースの量子コンピューティングや分散量子センシングの実現を目指す。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る